太陽光発電のコストを5分の1に、エネルギー変換効率40%への挑戦自然エネルギー

再生可能エネルギーの中で最も有望視されている太陽光発電だが、光から電力を生み出す効率が低く、発電コストが高い点に課題がある。シャープは従来の2倍以上のエネルギー変換効率を発揮できる太陽電池の開発に成功した。2030年には発電コストを現在の5分の1に低減できる見通しだ。

» 2012年12月12日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 太陽光のエネルギーから電気を生み出すことが太陽電池の役割である。通常は1平方センチメートルの面積に当たる太陽光のエネルギーを100mW(ミリワット)と想定して、そこから得られる電力の大きさによって太陽電池のエネルギー変換効率を算出する。

図1 シャープが開発したエネルギー変換効率の高い太陽電池セル。出典:シャープ

 現在のところ実用レベルの太陽電池の変換効率は15〜20%程度にとどまる。つまり1平方センチメートルの太陽電池から得られる電力は15〜20mWである。この変換効率を2倍にできれば、建物の屋根やメガソーラーに設置する太陽光パネルから得られる電力量も2倍になるわけだ。

 シャープが開発に成功した新しい太陽電池は変換効率が37.7%で、まさに現在の2倍の性能を発揮する。1センチ角のセル1枚(図1)から37.7mWの電力を作ることができ、研究レベルでは現時点で世界最高である。今後は実用化に向けて、移動体用の発電システムなどに適用していく予定だ。

 この太陽電池はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「革新的太陽光発電技術研究開発」と呼ぶプロジェクトの中で開発したものである。このプロジェクトでは2030年に太陽光発電のコストを1kWhあたり7円にすることを目標にしている(図2)。

図2 太陽光発電ロードマップ「PV2030+」の主な目標。出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構

 現時点の太陽光発電のコストは、固定価格買取制度の単価が発電事業者の利益を含めて42円に設定されていることからもわかるように、1kWhあたり35円程度かかる。これを火力発電(10円/kWh程度)よりも低いコストに抑えることができれば、現在よりも安い電気料金で太陽光による電力を利用できるようになる。

 シャープが開発した太陽電池は研究レベルの変換効率では2030年の目標値である30%を大幅に上回っている。ただし発電コストを下げるためには、変換効率の向上と合わせて生産量の拡大が不可欠である。技術革新と並行して企業や家庭の導入意欲を高めるための国の施策も重要になってくる。

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