11円に下がった米国の太陽光コスト、2020年の大目標へ急接近自然エネルギー

米国は2010年から2020年の10年間で、太陽光発電システムのコストを4分の1に引き下げようとしている。最終目標は1kWh当たり6セント(約6円)だ。計画開始から3年目の2013年には11.2セント(約11.2円)を達成できた。

» 2014年02月21日 14時40分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 ドイツの大規模太陽光発電は既にガスタービン発電と発電コストで競争できる水準に達している(関連記事)。最も条件のよい発電所で8ユーロセント/kWhだ。他国の状況はどうなのだろうか。

 米エネルギー省(Department of Energy)は2014年2月、大規模太陽光発電システムの導入コストが1kWh当たり11.2セント(1米ドル100円の場合、11.2円)まで下がったと発表した*1)。米国が打ち出した10年計画の最初の3年で目標の60%を達成した形だ。

 図1にコストの内訳を示す。縦軸は1kWh当たりのコスト(セント)、横軸は西暦。コストは4つの部分からなっており、太陽電池モジュール(ピンク)、パワーコンディショナー(オレンジ)、電線やヒューズ、架台(濃緑)、その他(黄緑)である。その他には許認可手続きや検査、取り付けなどのソフトウェアコストが含まれている。

*1) 関連記事で取り上げたドイツの事例と同じく、発電所の設計、建設から運用、廃止までの全てのコスト(支出)を、生涯発電量で割った均等化発電原価(LCOE)による値だ。

図1 大規模太陽光発電システムのコストの変化と内訳 出典:国立再生可能エネルギー研究所(NREL)

 2013年と2010年のコストを比較すると、削減分の10.2セントに最も寄与したのは太陽電池モジュールだ。寄与率は72%である。

 太陽電池モジュールのコストは11セント(2010年)から、10.9セント、5.9セント、3.7セント(2013年)へと継続的に下がっている。パワーコンディショナーは1.6セントから1セントまで、その他のハードウェアは2セントから1.9セントまで、ソフトウェアは6.8セントから4.6セントまで下がった。

サンショット計画の目標に急接近

 米エネルギー省はサンショット計画(SunShot Initiative)の目標達成に大きく近づいたとしている。2010年に始まった同計画の目的は、2020年までに太陽光発電システム*2)の導入コストを2010年の水準から75%削減し、1kWh当たり0.06米ドルまで引き下げようというもの*3)。図1にある緑の点線が目標値だ。0.06米ドルという数字は、なんら政策的な支援がなくても従来型の大規模発電と価格競争できる水準である。

*2) 関連記事で取り上げたような大規模集光型太陽熱発電(CSP)システムも対象としている。
*3) 出力1Wに必要な機材コスト(太陽電池モジュールと周辺機器、BOSの合計)についても目標を定めており、電力事業用は1米ドル、商用分散型は1.25米ドル、住宅用は1.5米ドルである。電力事業用に占める太陽電池モジュールの目標コストは0.5ドルだ。

 日本にもコストを目標とした長期計画がある。2009年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発表したロードマップ「PV2030+」だ。2050年までの太陽光発電による発電コストの目標を示したものであり、2020年の目標は、業務用電力並み(14円/kWh)。

 2030年に事業用電力並み(7円/kWh)という数字も挙げており、ほぼサンショット計画の目標に相当する。ただし、1年ごとの計画達成率やコストの内訳などを公的機関が計測・発表していないため、現時点の達成率を他国と比較しにくい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.