市民参加型の発電事業に警鐘、ファンドの運営会社に行政処分も法制度・規制

長野県の飯田市を中心に市民参加型の太陽光発電事業などを展開している「おひさまエネルギーファンド」に対して、証券取引等監視委員会はファンドの資金管理に不適切な点があることなどを明らかにした。監督官庁の金融庁は5月中に行政処分を決定する見通しだ。

» 2014年05月20日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 証券取引等監視委員会は5月16日に、長野県飯田市に本社がある「おひさまエネルギーファンド」の業務実態を検査した結果から、法令違反の事実が認められたことを公表した。合わせて内閣総理大臣と金融庁長官に対して、同社に行政処分を下すように勧告した。

 監視委員会が指摘した問題点は3つある。第1に、ファンドの資金管理口座と会社固有の財産口座を分別して管理していないことである(図1)。金融証券取引法では、ファンドなどを運用する金融取引業者に対して資金の分別管理を義務づけていて、違反した場合には認可の取り消しや業務の停止を命令することができる。

図1 口座の分別管理に関する金融庁の監督指針(左)、おひさまエネルギーファンドの現状の口座管理(右)。出典:おひさまエネルギーファンド

 第2の問題点は同社が立ち上げ直後のファンドで、事業の利益が発生していない期間にもかかわらず、当初の計画に沿って現金を分配していたことである。おひさまエネルギーファンドの現金分配方法は元本に毎年度の利益を上乗せするパターンが原則だが(図2)、複数のファンド間で資金の賃借を実施して現金の分配に充当していた。

図2 ファンドの出資者に対する利益配分のイメージ。出典:おひさまエネルギーファンド

 以上の2つの問題点により、ファンドの出資金の管理が不適切な状況にあると監視委員会は指摘した。さらに第3の問題点として、このような資金の管理状況にあったにもかかわらず、おひさまエネルギーファンドは財務省の関東財務局長に対して、ファンドの資金が分別管理されているとする虚偽の報告書を提出していた。

 おひさまエネルギーファンドは監視委員会からの通達を受けて、5月17日に見解を発表した。分別管理の問題に関しては、「事業会社を分けて会社ごとに口座があることで、分別管理されているという認識だった」としたうえで、不適切とされた点を早急に改善する意向を表明した。

 2点目のファンド間の資金の貸借については、金利を設定した金銭消費貸借契約に基づく一時的な措置であり、資金の流用ではないことを強調している。監視委員会の発表でも、ファンドの資金に私的な流用がなかった状況は認められている。

 おひさまエネルギーファンドは5月21日に金融庁の聴聞を受ける予定で、5月中に行政処分の内容が決まる見通しだ。ファンドの運用そのものに悪質な問題はなかったとみられるが、資金管理に不適切な部分があったことは運営会社として非を問われても致し方ない。

 同社は2004年に飯田市で「南信州おひさまファンドプロジェクト」を開始して以降、飯田市の太陽光発電を中心に、岡山県の木質バイオマス発電、富山県の小水力発電など、市民出資によるファンド方式の再生可能エネルギー事業を数多く展開している。現時点では、これまでに実施した現金分配を変更する考えはなく、実施中のファンド事業も当初の予定通りに継続していく方針だ。

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