救急車の音でわかるドップラー効果、風力発電所の風況も測定できる自然エネルギー

風力発電を実施するうえで、風速や風向などの風況データを測定することは欠かせない。三菱電機は光の「ドップラー効果」を利用して、地上から風況を測定できる装置を開発した。通常の観測マストを建設する方法と比べてコストが格段に少なくて済み、浮体式の洋上風力に使うこともできる。

» 2014年06月02日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「ドップラー効果」は救急車が通過する時の音の違いでわかる物理的な現象である。救急車が近づく時と遠ざかる時で、音波の周波数が変わるために違う音になって聞こえる。このドップラー効果を応用して、風速や風向を測定できる装置を三菱電機が開発した。「風計測ライダ(Lidar=Light detection and ranging)」と呼ぶ装置で、地上から上空の風況を測定することができる(図1)。

図1 風況を測定する「風計測ライダ」。出典:三菱電機

 風力発電では風速や風向が安定している場所を選ぶ必要があり、発電所を建設する前に一定期間にわたって風況を観測することが欠かせない。最近では風車の大型化に伴って、上空の高い位置で風況を測定することが求められる。高さが数十メートルに及ぶ観測マストを建設する方法が一般的だが、膨大なコストがかかる点が課題になっている。

 三菱電機が開発した風計測ライダは地上に置いた状態で、上空のさまざまな高さの風況を測定することができる(図2)。装置から広い範囲に向けてレーザー光を発射すれば、複数の地点の風況データを1台で計測することも可能だ。

図2 風計測ライダの使用イメージ。出典:三菱電機

 上空に発射したレーザー光は大気中の微小な浮遊粒子であるエアロゾルに当たって装置に戻ってくる(図3)。この時に光のドップラー効果によってエアロゾルの移動速度がわかる原理だ。発射してから戻ってくるまでの時間で測定地点までの距離がわかり、エアロゾルの移動距離と方向から風向を測定することもできる。

図3 ドップラー効果で風速を測定する原理。出典:三菱電機

 三菱電機は風力発電が盛んなオランダのエネルギー研究センター(ECN)の第三者評価試験で導入基準をクリアした。これを受けて6月中に風計測ライダを製品化して世界各国で販売する予定だ。

 装置の重さは60キログラム以下で持ち運びが可能で、消費電力は100ワット以下に収まる。内部にジャイロを搭載して耐動揺性を確保すれば、浮体式の洋上風力発電の風況調査にも適用できる。

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