電力の小売をめぐる動きが活発になる中で、再生可能エネルギーによる電力の取引も広がりを見せている。新電力のイ―レックスは固定価格買取制度の単価よりも高い価格で電力を買い取るサービスを開始した。山梨県の南アルプス市で運転中の太陽光発電所から調達する。
再生可能エネルギーによる電力事業の拡大を目指す新電力のイ―レックスが太陽光発電の買取サービスに乗り出した。第1弾として6月12日に山梨県の南アルプス市にある太陽光発電所から調達を開始した。
イ―レックスは買い取った電力を顧客の工場やオフィスなどに供給する(図1)。従来は同社が高知県で運営するバイオマス発電所をはじめ、火力発電による電力を調達して販売してきた。今後は風力・地熱・水力を含めて、再生可能エネルギーによる電力を発電と小売の両面で拡大していく。
イ―レックスは固定価格買取制度の買取価格にプレミアムを上乗せして高く買い取ることを基本方針にする。電力会社よりも好条件で買い取ることで調達量を増やす狙いである。クリーンな電力を求める企業に対して、通常よりも高めの価格で販売することになる。
固定価格買取制度では電力会社や新電力などの電気事業者が買い取った再生可能エネルギーの電力に対して、火力発電などによる標準的な電力との差額分を国が交付金として還元する仕組みになっている(図2)。このため実際に電気事業者が負担するコストは買取価格よりも低くて済む。
例えば電力会社と比べて1kWhあたり3円高く買い取った場合でも、実質的に10円程度のコストで調達できる(図3)。さらに内部コストを低減することなどにより販売価格を低く抑えることも可能になる。イ―レックスはクリーンな再生可能エネルギーによる電力をメニューに加えて電力会社に対抗していく構えだ。
2016年に電力小売の全面自由化が決まり、これから各社が顧客獲得に向けて激しい競争を繰り広げる。その中で再生可能エネルギーによる電力は環境重視の企業や家庭のニーズが期待できるため、取引量の拡大が予想される。今後さらにプレミアム価格で電力を買い取る事業者が増えていくことは確実で、再生可能エネルギーの発電設備を拡大することにもつながりそうだ。
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