スペインに学ぶ「3条件」、再生エネの比率を5割以上に自然エネルギー(1/2 ページ)

スペインで全国の系統電力の運用を担当する企業REEは、2014年1〜5月の発電量のうち、再生可能エネルギーに由来するものが、52.7%に達したと発表した。これほど比率が高まると、系統が不安定化するのではないだろうか。スペインが安定した「3つの条件」を紹介する。

» 2014年06月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 スペインで全国の系統電力の運用を担当する企業であるRed Eléctrica de España(REE)は、2014年1〜5月の発電量の実績値などを発表した。

 それによると、この5カ月の全電力量に占める再生可能エネルギー由来の電力の比率は52.7%。5カ月間を通じて、24時間の電力消費量のうち、過半数を担ったことになる。再生可能エネルギーのうち、最も寄与したのが風力(24.5%)、次に水力(21.8%)。太陽光(2.9%)、再生可能熱(1.8%)、太陽熱(1.7%)が続く。水力を抜いた値でも、30%を超えている。

 再生可能エネルギー以外では、原子力(22.9%)、コージェネレーション(9.8%)、石炭火力(8.1%)、コンバインドサイクル(ガスタービン)(6.5%)だった*1)。電力の9割を火力発電(ガス、石炭、石油)に頼る日本とは対照的な姿だ(関連記事)。

 図1にデータを示す。左側の円が2014年1〜5月の総発電量に占める各種電源の比率、右側の円は2013年6月〜2014年5月の比率だ。左側の円のうち、黒枠で囲った部分が非再生可能エネルギーの比率(47.3%)、赤枠が再生可能エネルギーの比率(52.7%)、緑色の枠が風力の比率(24.5%)。凡例は、左上から、再生可能エルギーに由来する再生可能熱、風力、太陽光、水力、太陽熱。下段は非再生可能エネルギーに由来する石炭、原子力、コンバインドサイクル、コージェネレーションなどだ。

*1) スペインの2008年(通年)の発電電力量の比率は、再生可能エネルギーが32%、うち風力(10.8%)、水力(7.4%)が主力であった。再生可能エネルギー以外ではコンバインドサイクル(32.0%)、原子力(20.5%)、石炭(16.1%)である。化石燃料の比率は49%だった。

図1 全発電量に占める各種電力源の比率 出典:スペインREE

スペイン=東京電力?

 スペインを電力の規模から見ると、東京電力と似た位置にあることが分かる。東京電力が公表している数値と合わせるために2010年の値を比較してみよう。スペインは総発電量が3031億kWh、人口4700万だ。東京電力は総発電量が2690億kWh、管内の人口が4476万人。

 スペインは他国との連系線の容量においても東京電力といくぶん似ている。スペインはヨーロッパ大陸から西に突き出すイベリア半島に位置している。地続きの大国は北西のポルトガル、東のフランスだけだ。スペインの電力系統はポルトガルの系統とフランスの系統の間に挟まれた形になっており、それぞれの系統をつなぐ連系線の容量は東京電力と似た規模だ。ポルトガルとは72.5万kW(ポルトガルへ)、85万kW。フランスとは110万kW(フランスへ)、100万kWだ。東京電力も2つの電力会社に挟まれている。東北電力との間で110万kW(東北電力へ)、500万kW。中部電力との間は往復とも100万kWだ。

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