紫外線を生かす「粉」、太陽電池の性能を2.2%アップ蓄電・発電機器(1/2 ページ)

日立化成は2014年夏、太陽電池の変換効率を高める波長変換粒子の販売を開始する。シリコン太陽電池モジュールの内部にある封止シートに混ぜ込むことで、効果を発揮する粉末だ。紫外線を可視光に変換することで、本来の光のエネルギーを引き出すことが可能になり、変換効率が最大2.2%向上する。

» 2014年07月03日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 日立化成は、2014年第2四半期(7〜9月)、太陽電池の変換効率を最大2.2%高める粉末の販売を開始する。「国内外の複数の企業にサンプル品を提供し、効率の向上を確認できた。現在は顧客側の最終評価中である」(同社)。「当社の材料を追加することで上昇する製造コストを、変換効率が向上する効果が十分上回ることも確認できている」(同社)。

 太陽電池モジュールは、太陽から来る光のうち、一部分だけしか電力に変えることができない。これまで十分利用できていなかった光を利用しやすい光に変換するというのが、日立化成の材料の特徴だ。同材料を「波長変換粒子」と呼ぶ。波長が短い紫外線を波長が長い可視光に変換する能力を持つ蛍光体微粒子を、アクリル粒子内に分散させた。

 図1が波長変換粒子である。蛍光灯で照らした状態では何も起こらず、白く見える。しかし、目に見えない紫外線を照射すると、緑色の蛍光を発する。紫外線を可視光に変換した結果だ。

 太陽電池は紫外線を使って発電できるものの、紫外線の持つエネルギーの大半を利用できない。紫外線を可視光に変えることでエネルギーの利用率を高めることが波長変換粒子の目的だ。「特定の波長の紫外線だけでなく、ある幅(バンド)をもった紫外線を可視光に変換できる」(日立化成)。

図1 波長変換粒子の機能 蛍光灯化(左)では機能せず、紫外線下(右)で発光する。 出典:日立化成

 「原料の蛍光体自体は他社も購入できる。当社の波長変換粒子の特徴は、蛍光体に独自の処理を加えたこと、アクリル樹脂の合成、アクリル樹脂の粒子化技術の3点にある。例えば、蛍光体を混合すると、本来透明な太陽電池材料(封止材)の透明度が原理的には落ちる。しかし、蛍光体粒子の直径の制御や、アクリル樹脂の屈折率の最適化などを施すことで、実用上、透明度に影響度がでないようにできた」(同社)。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.