北海道と山口で4種類の太陽電池を試す、湿地帯や沿岸部の対策も蓄電・発電機器

専門商社のユアサ商事が太陽光発電事業の拡大に向けて、山口県に続いて北海道にメガソーラー級のテストプラントを稼働させた。2カ所で合計4種類の太陽電池モジュールを採用して性能評価を実施するほか、湿地帯に建設するための地盤対策や海に近い場所の塩害対策の効果も検証する。

» 2014年07月08日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 ユアサ商事が北海道のテストプラントを建設した場所は、日本最大の「釧路湿原」の近くにある湿地帯だ。地盤が軟弱なために基礎をコンクリートで造ることができない。そこで砕石と再生骨材で地盤を固めて鋼鉄製の杭を打ち込む工法を採用した(図1)。砕石と再生骨材は除草の手間を省く狙いもある。

図1 「ユアサ商事釧路川ソーラーパーク」の全景(左)と地盤対策(右)。出典:ユアサ商事

 1万6500メートルの自社所有地に、4400枚の太陽光パネルを設置して7月1日に運転を開始した。発電能力は810kWで、太陽光パネルには東芝製の単結晶シリコンタイプとソーラーフロンティア製の薄膜CIS化合物タイプの2種類を採用した。それぞれ発電効率や耐熱性能などに違いがあるため、実際の発電量を比較して積雪・寒冷地域の適性を検証する。

 年間の発電量は97万kWhを見込んでいる。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は13.6%を想定していて、国内の標準値よりも少し高めだ。発電した電力は全量を固定価格買取制度で北海道電力に売電する。

 ユアサ商事は1年前の2013年7月に、山口県の瀬戸内海に面した沿岸部で1.2MW(メガワット)のテストプラントを初めて稼働させた(図2)。1万8000平方メートルの自社所有地に5500枚の太陽光パネルを設置したメガソーラーだ。ソーラーフロンティア製のほかに、パナソニック製とカナディアン・ソーラー製の多結晶シリコンタイプを組み合わせて使っている。

図2 「ユアサ商事平生メガソーラーパーク」の全景(左)と塩害対策を施した架台(右)。出典:ユアサ商事

 年間の発電量は143万kWhを見込み、設備利用率は同じく13.6%に設定した。砕石を利用した防草対策に加えて、海に近いために太陽光パネルを設置する架台に塩害対策として防さびも施した。発電した電力は全量を中国電力に売電する。

 ユアサ商事は中期経営計画の中で、環境エネルギー事業を成長分野の1つに掲げている。気候が大きく違う北海道と山口で発電設備の効果を検証しながら、その実績をもとに今後はメガソーラーの設計・調達・施工を請け負うEPC(Engineering Procurement Construction)事業を拡大していく方針だ。

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