薄くて軽い「薄膜太陽電池」、住宅からメガソーラーまで用途が拡大キーワード解説

太陽電池は素材や製造方法によってタイプが分かれる。現在のところ結晶タイプのシリコンを使ったものが主流だが、最近では各種の化合物を素材に利用した薄膜タイプの製品が増えてきた。薄くて軽く、日射熱に強い点が特徴で、建物の外壁やメガソーラーにも使われ始めた。

» 2014年05月16日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 太陽電池の種類は「シリコン系」「化合物系」「有機系」の3つに分けることができる。このうち国内の出荷量の8割以上を占めるのが、単結晶や多結晶のシリコン系だ。結晶タイプの太陽電池はエネルギーの変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換できる比率)の高さが最大の特徴である。その半面で素材になるシリコンのコストが高く、ガラス基板を使うためにパネルが厚くて重くなる点も課題になっている。

 こうした問題点を改善したのが化合物系と有機系だ。シリコンよりもコストが安い無機化合物や有機化合物を利用する。特に薄膜タイプの製品開発が進んでいて、太陽電池を形成する素材の厚さは数ミクロン以下になる。パネルに加工した場合でも薄くて軽く、変形させることもできる。

図1 CIS薄膜太陽電池モジュールの製品例。厚さは6.5ミリメートル。出典:ソーラーフロンティア

 化合物系の薄膜タイプで代表的なものがCISを素材に使った太陽電池である。CISは銅(Cu)・インジウム(In)・セレン(Se)などを原料にした無機化合物で、最近ではシリコン系に近い変換効率の製品が出てきた。国内ではソーラーフロンティアがCISによる薄膜太陽電池を開発していて、パネルの厚さがスマートフォンより薄い製品もある(図1)。

 これに対して炭素などで構成する有機系の化合物を使った太陽電池は、素材をフィルムに塗布して製造できる点が特徴だ。柔らかくて加工しやすいため、建材と一体化して建物の外壁などに利用するケースが多く見られる(図2)。ただしシリコン系や化合物系と比べて変換効率が低く、性能向上が今後の課題になる。

図2 有機薄膜太陽電池(左)とモジュール(中央)、ビルの外壁に設置した例(右)。出典:三菱化学

 このほかにシリコン系の太陽電池でも薄膜タイプがある。シリコンを薄膜状にして量産効果を高めたもので、シリコン系の課題であるコストダウンを図ることができる。いまのところ変換効率が低く、最先端の技術を使っても結晶タイプのシリコン系と比べると半分程度の性能にとどまる。

 シリコン系で薄膜タイプの太陽電池を開発しているカネカは、茨城県にある自社工場の敷地内にメガソーラーを建設して実用性を示した(図3)。発電規模は10MW(メガワット)に達する関東で最大級のメガソーラーである。

図3 薄膜シリコン太陽電池モジュールによるメガソーラー。出典:カネカ

 現在の主流である結晶タイプのシリコン系は日射熱によってパネルの温度が上昇すると、発電量が低下してしまう問題もある。この点を考慮してメガソーラーに薄膜タイプの太陽電池を採用する事例が増え始めている。今後さらに変換効率が向上していけば、薄膜タイプの太陽電池のシェアが高まる可能性は大きい。

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