建物の「窓」で発電、有機系太陽電池を外装材に使う自然エネルギー

竹中工務店はオフィスビルや工場の外装部分に太陽電池を用いる実証実験を開始した。軽量な有機系太陽電池を窓のルーバー(よろい戸)に設置し、発電しつつ、日照量を調整する試みだ。

» 2013年11月06日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 量産が続くシリコン系太陽電池やCIGSなどの化合物系太陽電池。これらの太陽電池では実現しにくい用途を狙うのが有機系太陽電池だ。有機系太陽電池は量産段階に入る前の段階にあり、変換効率や耐久性向上のための研究開発と同時に、用途開拓が続いている。

 有機系太陽電池は大きく色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池に分かれる。有機薄膜太陽電池は発電層が有機物だけからできているため、軽量で柔軟性に富む。従って住宅に設置する場合は、屋根にがっちりと固定するシリコン系とは異なり、壁面や窓への設置に向いている。

 2013年11月には有機薄膜太陽電池を建物の外装材に適用するための実証実験を開始したと竹中工務店が発表。同社によれば外装材を対象とした有機薄膜太陽電池の実証実験としては国内初の試みだという。

外装材としてどのように使えるのか

 竹中工務店は太陽電池自体の開発ではなく、建物の外装材としての実用化を検証する。今回はルーバー(よろい戸)への適用を調べる。建物の窓に取り付けるルーバーは、水平方向に長い羽板の角度を変えることで室内に入る太陽光の量を調整できる。ブラインドと似た目的で使う外装材だ(図1)。図1ではルーバーが10枚あり、ルーバーの表面に有機薄膜太陽電池を搭載している。黒い長方形に見えている部分が太陽電池だ。図1の薄桃色の枠の寸法は縦が2m、横が3.6m。

図1 ルーバーを用いた実証実験の様子。出典:竹中工務店

 一口にルーバーに適用するといっても実用化のためには実に多数の検証が必要なのだという。太陽電池をルーバーにどのように接着するのか、どのような接着剤が適しているのか、風圧(風荷重)の影響はどの程度なのか、建物のデザインと合わせるにはどうすればよいのか。

 「ルーバーの角度を太陽光と平行にすると室内に入り込む光は増えるが、発電量は最小になる。直角にするとその逆になる。室内に入り込む光が減ると空調の負荷が減るという意味では省エネ効果が高まるものの、建物内の照明がより必要になる。実証実験を通じて、省エネと創エネのバランスがとれるサイズや配置、角度制御について調べる」(竹中工務店)。

 実証実験のスケジュールは2期に分かれている。2013年度は熱や光と、発電量を最適化するための実験を室内に設置した試験体を使って進める。2014年度は外部環境に耐える構造や材料の仕様を検討し、性能を屋外実験で確認する。千葉県に位置する同社の技術研究所で進める実証実験は、2年間を予定している。その後は外壁に加えて屋根面や既存建物を改修した設置、曲面設置などの開発を続けるという。

三菱化学の有機薄膜太陽電池を利用

 実験に用いる有機薄膜太陽電池は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けた三菱化学が開発中の「有機系太陽電池一体型ルーバー」である(図2)。「実験に用いる太陽電池のモジュール変換効率(発電エリア)は4%強」(竹中工務店)。ルーバー1枚ごとに配線ユニット(ジャンクションボックス)が取り付けられており、隣接するルーバーと電気的に接続できるようになっている。

 太陽電池を取り付けるルーバーの素材は三菱樹脂が開発したアルポリック。芯材の樹脂を面材のアルミニウムで挟み込んだアルミ樹脂複合板だ。

図2 有機系太陽電池ルーバーの構造。出典:竹中工務店

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