「冷蔵庫の中身」を外出先から確認、省エネだけではない家スマートホーム(2/2 ページ)

» 2014年07月10日 14時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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実証実験から何が得られたのか

 実証実験は2012年11月に始まり、まず基礎実験を重ねた。2013年10月から2014年3月は入居実験に当てた。「当社の住宅の購入者1組1家族の仮住まいとして利用した。数カ月間、電力の使用量や光熱費の推移を記録し、住宅を使った感想などを聞き取った」(三井ホーム)。2014年4月から7月に改修工事を進め、今回のリニューアルオープンとなった形だ。

 基礎実験と入居実験を経て、MIDEASでは何が分かり、どのような成果が生まれたのだろうか。

 「当初から電気使用量の50%削減と、太陽熱給湯の利用でガスと電気の使用量を半分に削減することを目的としている。現在、ほぼ達成した段階であるが、まだ改善点が残っており、引き続き実証実験を重ねる」(三井ホーム)*4)

*4) この他、住宅の建設から解体までのライフサイクル全体でCO2排出量がマイナスとなるライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅を目指している。「LCCMについてはCASBEE(建築環境総合性能評価システム)の2010年版で戸建新築として環境効率でSランク、LCCM住宅として星印5つの認定を受けている」(三井ホーム)。

4つの商品の製品化につながった

 同社によればMIDEASの実証実験から生まれた成果は大きいのだという。主に4つの商品(技術)を生み出すことができた。

 第1が、枠組壁構法(工法)の改善だ。いわゆる「ツーバーフォー(2X4)」の改善である。同社は2X4を利用した高断熱な「プレミアム・モノコック構法」を住宅に適用してきた。2014年1月には2X4を2X6(ツーバイシックス)として標準化し、空調効率を約16%向上したという。「MIDEASでは当初から2X6を取り入れており、実証実験で効果を確認できたため、商品化した」(三井ホーム)。2X4から2X6に改善する際、壁の中間部の厚みを89mmから140mmへ、1.6倍に増やしている。断熱材を充填できる厚みが1.6倍になったことを意味する*5)

*5) 2X6はロックウール(140mm厚)の外壁として生かす。アルゴンガス入り高遮熱Low-Eガラスなどと組み合わせて建物全体の熱性能を高める。

 第2が2X6と同時に発表した高効率健康空調システム「Newスマートブリーズ」の商品化だ。通年エネルギー消費効率APFの値が5.0と高い。直径2μm(100万分の2m)以上の粒子を90%捕集する機能も付けた。PM2.5対策だ。

 第3が2014年4月に発表した屋根一体型太陽光発電システム「ソーラークロス10kW」だ。太陽電池モジュールと瓦を一体施工できるため、モジュール下部の屋根仕上げ材を不要とし、屋根重量を軽減できる。屋根材と一体感のある仕上げが可能な製品だ。

 第4が2013年12月に実用化した屋上緑化。3層アスファルト防水を採用して、防水性、耐久性を高めた。ルーフバルコニーを全面緑化できるため、見栄えはもちろん、遮熱効果と建物の省エネルギー性能を向上できるという。

冷蔵庫の内容を外出先から確認

 2014年7月のリニューアルで追加された実証実験の内容は3つある。MIDEASが備える家庭用エネルギー管理システムMIDEAS HEMSが中核となった実証実験だ。

 MIDEAS HEMSは通常のHEMSが持つ電力量などのエネルギー情報の管理・表示の他、2つの機能を備えている。室内温湿度や照度・気象情報、振動を取得するセンサーとの連携が1つ。もう1つが窓やルーバー、照明、家電を制御する機能だ(図5)。

図5 MIDEAS HEMSの機能 出典:三井ホーム

 第1の新実験は、「ナチュラルユーザーインタフェース Kinect(キネクト)」の機能向上だ(図6)*6)。これまでの実証実験では手を振る操作で窓やブラインドを開閉する、浴槽へ湯張りするなどの命令を実行できた。「今回は音声によるコマンド実行機能を加えた。照明をつける操作に『部屋を明るく』という音声を結び付けて登録できる。照明の入り切りや窓の開閉、カーテン開閉、扇風機のオンオフなどを実行可能だ」(三井ホーム)。MIDEAS HEMSとKinect、家電を連携することで実現した。

*6) Kinectは米Microsoftが開発したセンサー装置であり、複数の視覚センサーとマイクロフォンを備える。当初は家庭用ゲーム機「Xbox 360」の周辺機器であったものの、2011年以降はゲームから離れたセンサー機器としても提供されている。

図6 ナチュラルユーザーインタフェース 出典:三井ホーム

 第2は「タッチユーザーインタフェース」だ(図7)。「これまでもHEMSの情報を数値やグラフでなく、水槽(アクアリウム)の魚の数や種類で表すといった工夫を凝らしていた。しかし、表示はテレビ画面上に限られていた。新たに、テレビの反対側の壁面に小さなタッチモニターを配置した他、スマートフォンやタブレット端末から操作できるようにした」(三井ホーム)。スマートフォンなどに対応したことにより、特定の機能をアプリ(アプリケーション)として追加していく仕組みを作った。例えば、照明や窓を操作するアプリ、さらに映画鑑賞に適した照明に変えるアプリなど、ユーザーの使い方に応じてアプリを選んでインストールすることが可能になっていく。

図7 タッチユーザーインタフェースの導入 出典:三井ホーム

 第3は「IT家電との連携」だ。「従来は家庭内でECHONET Lite対応の家電とMIDEAS HEMSを接続して利用していた」(三井ホーム)。新たに外出先からスマートフォンなどを利用して、操作できるようにした(図8)。例えば前述したNewスマートブリーズの設定を確認できる他、室温や風量設定が可能だ。冷蔵庫では面白い使い方ができる。買い物先で野菜の選択に迷ったときに庫内カメラを使って、手持ちの野菜を確認するといった使い方ができるという。

図8 外出先から家電を制御できる 出典:三井ホーム
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