北海道電力が家庭向け・企業向けともに2割前後の大幅な値上げを国に申請した。原子力発電所の再稼働が想定よりも遅れ、火力発電の燃料費が増加したことを理由に挙げるが、増加額の大半は石油だ。2年連続の値上げによって販売量が低下することは必至で、売上も利益も計画ほどに伸びない。
北海道電力が7月31日に申請した電気料金の値上げ幅は予想を大きく超えていた。家庭・商店向けで平均17.0%、企業向けで同22.6%という異例の値上げ率だ。家庭向けの標準モデルで月額1069円も高くなる(図1)。
さらに時間帯別のメニューは25%以上の大幅な値上げ率になっていて、利用者の節電意欲に対抗するかのような申請内容である。国が認可する料金がどの程度になるか注目だが、燃料費の増加を理由にした再値上げは圧縮の余地が小さいと考えられる。北海道民には受け入れがたいレベルの値上げ額になる可能性が大きい。
北海道電力は2013年9月の値上げに続いて、2014年10月に再度の値上げを実施することになる。原価の約半分を占める電源関連のコストが想定よりも大幅に増加して、前回の値上げ申請時と比べて年間に1184億円も増える見込みだ(図2)。このうち燃料費の増加額は739億円で、大半を石油が占めている。
全国に10社ある電力会社の中でも、北海道電力の燃料費の比率はひときわ高い。最大の問題は老朽化した火力発電所が多く、発電効率の高いLNG(液化天然ガス)を使える火力発電所が1つもないことだ(図3)。電力会社でLNG火力発電所がないのは北海道電力のほかには、燃料費のかからない水力発電の比率が高い北陸電力だけである。
北海道電力は再値上げの理由として、原子力の泊発電所の再稼働が遅れていることを挙げている。しかし実際には原子力に依存するあまり、火力発電所の設備更新を怠ってきた影響が大きい。以前から石油の価格はLNGや石炭と比べて高く、長期的に上昇する傾向にあることも十分に想定できた。経営責任を問われて当然の状況だ。
もう1つの問題は電力の需要を過大に見込んでいる点にある。2012年度から2013年度にかけて販売量が約2%減少したにもかかわらず、2014年度以降に再び増加することを予測している(図4)。
実際には家庭でも企業でも節電対策が定着して、電力の使用量は今後も減り続ける。さらに再値上げによって節電の機運が高まり、一方でエネルギー効率の高いガスコージェネレーションなどへ移行する動きが加速することは確実だ。
値上げに比例する形で売上は増えていかないと見るのが現実的である。それに伴って石油火力の発電量も少なくなり、燃料費が想定以下の水準に収まる。結果として収支が多少は改善するだろう。今後も石油と原子力に依存しながら、事業規模を縮小する方向に進んでいく。
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