電力会社で初の高圧一括受電サービス、東京電力が首都圏から提供開始電力供給サービス

2016年4月に実施する電力小売の全面自由化に備えて、東京電力がいち早くサービスの強化に乗り出した。首都圏のマンションを対象に、家庭向けよりも料金の安い高圧の電力を一括で提供する。電力会社では初めてのサービスで、マンションの共用部の電気料金が2〜4割ほど安くなる。

» 2014年08月12日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力は8月5日から「スマートマンションサポートサービス」の営業を開始した。既設の分譲マンションを対象に、企業向けと同様に料金の安い高圧の電力を供給する(図1)。マンションの住民にとっては導入費用がかからずに、共用部の電気料金を2〜4割ほど削減できるメリットがある。

図1 マンション向けの高圧一括受電サービス。出典:東京電力

 当初は首都圏の東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の既設マンションからサービスを開始して、順次エリアを拡大していく計画だ。従来こうしたマンション向けの「高圧一括受電サービス」は、中央電力などの新電力が提供してきた。東京電力は電力会社で初めて高圧一括受電サービスを開始して、2016年4月の小売全面自由化に備える。

 ただし新電力の高圧一括受電サービスとの違いは、電気料金の削減対象をマンションの共用部に限定している点である。新電力が提供するサービスの場合には、共用部ではなくて各住戸(専有部)の電気料金を削減するオプションも選択できるのが一般的だ。東京電力のサービスではマンションの管理組合が支払う共用部の電気料金に限定する(図2)

図2 電気料金の削減イメージ。出典:東京電力

 このサービスを導入すると電力の供給契約も変わる。各住戸は東京電力ではなくてマンションの管理組合と契約する形になり、管理組合が東京電力と契約する(図3)。各住戸の電力使用量の検針から料金請求・収納までは、従来と同様の方法で東京電力が代行することになる。

図3 契約形態と電力供給サービスの流れ。出典:東京電力

 マンション全体で高圧一括受電サービスに切り替えると、各住戸が個別に小売事業者を選ぶことはできなくなる。電力会社にとっては全面自由化による顧客の流出を防ぐ狙いがある一方、マンション全体から得られる電気料金が少なくなるデメリットもある。

 首都圏は全面自由化による顧客の獲得競争が真っ先に激しくなることが予想されるため、東京電力はいち早く対抗策に乗り出した。首都圏に続いて利用者の多い関西圏や中部圏でも同様の動きが進む可能性は大きい。関西電力と中部電力も高圧一括受電サービスを近く開始する見込みだ。

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