水素社会の実証プロジェクト、九州大学の新キャンパスに燃料電池を集めて開始スマートシティ

水素エネルギーの実用化で先行する福岡県が未来に向けた社会実証プロジェクトを開始する。九州大学の新キャンパスに次世代の燃料電池を集めて性能評価を実施する一方、水素の高圧貯蔵や系統電力との連系、燃料電池自動車と再生可能エネルギーを組み合わせたシステムの実証も進める計画だ。

» 2014年08月21日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 福岡県は2020年を目標に「グリーンアジア国際戦略総合特区」による新しい成長産業を育成する計画で、その1つとしてSOFC(固体酸化物形燃料電池)の実用化に狙いを定めている。特区の制度を通じて国から17億5100万円の推進調整費を受けることが決まり、SOFCを活用した社会実証プロジェクトを2014年度内に開始する。

 実証の場は九州大学が福岡県の西部に建設中の「伊都キャンパス」を利用する。キャンパス内にある「次世代燃料電池産学連携研究センター」にSOFCの実証サイトを構築して、燃料電池システムの性能や耐久性を評価することから始める(図1)。次世代の電源として期待を集める発電能力250kW程度の産業用のほか、5kW程度の業務用と1kW程度の家庭用のシステムを主要メーカーから調達する予定だ。

図1 「スマート燃料電池社会実証」の全体像。出典:福岡県商工部

 さらにキャンパス内で燃料電池システムと九州電力からの系統電力を連系させた場合の実用性も検証する(図2)。伊都キャンパスで使用する電力は年間に3000万kWh程度になる見込みで、系統電力と燃料電池のほかに太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせて、災害に強い社会を実現するためのエネルギー供給体制を構築する計画である。

図2 九州大学の「水素キャンパス構想」。出典:福岡県商工部

 キャンパスで利用する公用車には燃料電池自動車を採用して、CO2を排出しない「水素キャンパス」を目指す。すでに構内には水素ステーションが設置されていて、水を電気分解する方式で水素を供給することができる。新たに水素ステーションの屋上などに太陽光パネルを設置して、再生可能エネルギーによる電力で水素を製造・貯蔵できるシステムを導入する(図3)。

図3 燃料電池自動車と再生可能エネルギーを組み合わせた未来社会実証システム。出典:福岡県商工部

 九州大学の伊都キャンパスは2005年に工学系の施設から移転を開始して、2019年度までに総勢1万8700人の学生・教員の移転を完了する予定になっている。福岡県が推進するグリーンアジア国際戦略総合特区の中では、SOFCや有機ELなどの環境志向の技術開発を九州大学が担う。

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