風力発電を中心に再生可能エネルギーを積極的に拡大する秋田県が水素エネルギーの開発にも挑む。水素の貯蔵・輸送技術で先行する千代田化工建設と協定を結び、県内で水素インフラの構築に取り組む構想だ。地域の活性化に向けて新しいエネルギー産業の振興を目指す。
秋田県と千代田化工建設が水素に関する連携協定を8月27日に締結した。両者で水素社会の実現に向けた取り組みを進めるために5項目の連携事項を掲げている。第1項は「再生可能エネルギーの開発と利用を踏まえた水素利用に関すること」で、この点に最大の目的がある。風力などの再生可能エネルギーを生かしてCO2フリーの水素を製造することが見込まれる。
政府は2040年代に「CO2フリーの水素供給システム」を確立する新戦略を6月に発表した。現在のところ水素の大半は化石燃料から製造するためにCO2を排出する。再生可能エネルギーの電力を使って水素を製造することで初めてCO2フリーになるわけで、秋田県は先行して開発に取り組む。
すでに秋田県は2011年に策定した「秋田県新エネルギー産業戦略」の中で、風力発電や太陽光発電と水素プラントを組み合わせた実証プロジェクトの構想を打ち出していた(図1)。それに先立って2009年から、日本海に面した大潟村で風力と太陽光、さらに蓄電池を組み合わせた実証事業を開始している。水素を加えた実証プロジェクトも大潟村で実施する可能性がある。
一方で千代田化工建設は神奈川県の横浜市にある事業所の構内に「大規模水素貯蔵・輸送システム」のデモプラントを2013年4月から稼働させている(図2)。気体の水素を常温で液化して貯蔵・輸送する技術を利用して、水素の製造拠点から利用拠点へ安全に供給できるインフラの構築を目指している。
千代田化工建設は神奈川県の川崎市と共同で、東京湾岸に水素供給インフラと水素発電所を建設するプロジェクトを推進中だ。秋田県では水素の利用面よりも製造面に重点を置いた開発を進めていくものとみられる。両者の連携協定の残り4項目には、「水素インフラの構築」「水素の貯蔵・輸送・エネルギー利用」「水素社会による地域の活性化」「水素社会の実現に資する取り組み」が盛り込まれている。
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