水で発電「マグボックス」、非常時のケータイ充電30回蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年08月29日 18時50分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

世界初をうたう紙製容器

 マグボックスの開発・製造・販売は古河電池が担当する。マグボックスは発電に水を使う。同時に空気中の酸素も不可欠だ。つまり、密封できない。そこで凸版印刷がマグボックスの紙製容器を開発・製造した。「当社は液体を入れる紙製容器を大量に製造している。コンバーティング技術と呼んでおり、今回はマグボックスの外箱の内面に薄いポリエチレンフィルムを貼った」(凸版印刷)。

 マグボックス内には4本の電池セルと電池セルに空気を供給する箱、緩衝材がぎっしりつまっており、セル外装材と空気箱は紙製だ。凸版印刷の技術により、水密構造を維持したまま外箱を大型化(233×226×226mm)でき、紙製ながら強度も確保した。

 「外箱(注水前は約1.6kg)を6段重ねて保存しても大丈夫な強度を保証している。USBボックスやケーブルを取り除くと、紙やマグネシウムだけでできているため、災害時などには使用後に燃えるゴミとして扱っても有害な物質を出さない」(凸版印刷)。

電気を生み出す仕組みとは

 マグボックスと同じ反応を小規模にゆっくりと起こすこと自体は難しくない。子供用おもちゃ(ミニカーなど)の電力源として利用されているほどだ。

 金属板(正極)の表面に活性炭などを敷いて空気が通りやすい構造を作り、食塩水を染み込ませた繊維を挟んで金属マグネシウム板を向かい合わせる。最後に金属板と金属マグネシウム板を接続すると電流が流れる。マグネシウムから電子が出て、正極に向かう形だ。

 マグボックスでは電池セルに収められた金属マグネシウム(Mg)が電解液(注水した水)に溶け出し、マグネシウムイオン(Mg2+)となる*1)。このとき2個の電子(e)を負極に放出し、USB端子を通って外部機器に向かう。戻ってきた電子は正極で酸素(O2)、水(H2O)と結び付き、水酸化物イオン(OH)となる。金属マグネシウムは次第に減っていき、電解液には水酸化マグネシウムが残る。全ての金属マグネシウムが反応すると、電池の寿命が尽きる。

*1) 負極:2Mg→2Mg2++4e、正極:O2+2H2O+4e→4OH、全反応:2Mg+O2+2H2O→2Mg(OH)2

 マグネシウムは1原子から2個の電子を取り出すことができ、塩水に溶け出しやすい。このため発電効率が高いのだという。

 マグボックスの開発ポイントの1つは、正極で用いる酸素還元触媒だという。酸素を効率良く「分解」するために必要な触媒だ。従来の技術では白金(Pt)やレアメタルを使用する必要があり、コストアップ要因となっていた。古河電池はレアメタルを使わない触媒を開発することで解決したという。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.