下水でも大丈夫、バイオ燃料作り出す閉鎖環境ユーグレナ自然エネルギー(1/2 ページ)

神鋼環境ソリューションは2014年9月、従属栄養方式による「ユーグレナ」の本格的な培養を開始したと発表した。培養規模が大きい。2016年度以降に食品、次いで化粧品や化成品、2020年度以降にバイオ燃料用途を実用化する計画だ。

» 2014年09月11日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 神鋼環境ソリューションは2014年9月、「ユーグレナ」(Euglena gracilis)という単細胞生物の培養規模を拡大したと発表した。ユーグレナはミドリムシとも呼ばれ、光合成を行いつつ、運動*1)が可能な微生物(図1)。パームヤシやナタネなどの油脂植物と比較して10倍以上の油脂生産能力を持つ。

 培養には同社の技術研究所(神戸市西区)内に新設した体積1m3の閉鎖型培養槽を用いる。kg単位でバイオマスなどのサンプルを提供する体制が整ったという。さらなる培養槽の大型化に必要な条件を把握した後、2015年度には10m3培養槽に進む計画だ。

 「2016年度から2017年度に、まずは食品用途*2)を実用化し、2018年度は化粧品、化成品用途を実現、2020年度以降の早い時期にバイオ燃料として確立することを目指している。バイオ燃料では強くコストダウンが求められるため、順番としては最後になる」(神鋼環境ソリューション)。いずれも精製した物質をメーカーに供給する形を採る。

*1) 図1にあるペリクル(表面の条線)は帯のようにすべり運動をする。くねくねした動きを見せ、「すじりもじり運動」と呼ぶ。ユーグレナは図2にあるように光を感じる眼点と長短2本の鞭毛(べんもう)も備えている。遊泳に役立つのは長い鞭毛だ。
*2) ユーグレナは複数種類のアミノ酸を細胞内で合成する。ヒトが食品から取り入れなければならない必須アミノ酸をどの程度含んでいるかという指標としてアミノ酸スコアがある。ユーグレナのアミノ酸スコアは100(最高点)だという。

図1 ユーグレナの走査型電子顕微鏡像(EOD-1株) 出典:筑波大学 渡邉信・彼谷邦光研究室

栄養を与えて培養

 同社は2013年5月にバイオマス生産性に優れ、油脂含有率の高い微細藻類の培養に成功したことを発表している。筑波大学生命環境系で教授を務める渡邉信氏との共同研究によって発見したものだ。「今回は2013年に発表したユーグレナの培養規模を高めた形だ」(同社)。

 ユーグレナは光合成が可能でありながら、周囲の養分を吸収して増殖することもできる。そのため培養法が2つに分かれる。光を与える「光合成培養」と外部から有機物を与える「従属栄養培養」だ。

 神鋼環境ソリューションは、従属栄養培養を選んだ。理由は2つある。光合成よりも単位面積当たりに得られるバイオマス獲得量が数百倍になることが1つ。もう1つは日光や気温などの外部環境の影響を排除できることだ。従属栄養培養のうち、閉鎖環境で培養する閉鎖型従属栄養培養を採用している。

 既にさまざまな栄養を与えた培養条件をテストしている。「有機物を含む排水でも増殖が良好だ。下水は水質が安定しており、増殖に適している」(同社)。筑波大学と共同で排水処理を兼ねたエネルギー生産技術の確立も目指している。

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