卸売市場にも燃料電池、非常時に冷蔵庫を動かしたい電力供給サービス

大阪府中央卸売市場への大型燃料電池導入が進みそうだ。大阪府は2014年9月、「府有施設を利用した新エネルギー機器等による低炭素・分散型電源導入モデル事業」の実施候補者として、Bloom Energy Japanを選定したと発表した。今後、導入に向けて価格条件などを詰める。

» 2014年09月12日 16時40分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 大阪府茨木市と市場の位置

 大阪府中央卸売市場への大型燃料電池導入が進みそうだ(図1)。大阪府は2014年9月、「府有施設を利用した新エネルギー機器等による低炭素・分散型電源導入モデル事業」の実施候補者として、大型燃料電池システムを扱うBloom Energy Japanを選定したと発表した。

 「中央卸売市場が利用している非常用電源は開設以来のものであり、既に老朽化している。これを更新しつつ、市場の機能を高めたい。現在の出力900kWの装置を1650kWまで増強し、非常時にも冷蔵庫を動かす計画だった」(大阪府商工労働部成長産業振興室立地・成長支援課)。

 大阪府では関西イノベーション国際戦略総合特区事業をになうバッテリー戦略研究センターが中心となって、電池ビジネスの創出支援や関連産業の集積を目指している(関連記事)。太陽電池、燃料電池、蓄電池が対象だ。そこで、非常用電源の出力を増強するのではなく、より優れた電池を導入する道を探った。

 2014年7月には今回のモデル事業の公募を開始、5つの審査項目*1)を設けて応募者を審査した。「前提条件は系統電力が途切れても常に冷蔵庫の機能を維持することだ。冷蔵庫の機能維持には1MWの電池が必要である」(同課)。公募に当たり、900kWを1650kWに更新・増強した場合よりも大阪府と市場のトータルコストが削減できなくてはならないことを条件とした。

*1) 5つの審査項目は次の通り。(1)導入機器がCO2排出量等の環境負荷の低減の面で優れているか、(2)導入機器の発電技術・方法について、新規性・発電効率等の面で優れているか、(3)機器の普及につながる実証・改良研究要素が含まれており、今後の市場拡大が期待できるか、(4)メンテナンス体制、停電時も含め長期的に安定して電力を供給できるか、(5)発電コスト。

電力コストをどう見るか

 「Bloom Energy Japanのシステムの電力コストは25円/kWhと聞いている。しかし、現在市場が関西電力から購入しているコストはこれよりも低い。今後、電力コストを中心に費用負担などを中央卸売市場とBloom Energy Japanの間で調整し、合意した場合に限り、事業化する予定だ」(同課)。2015年9月末の導入を目指す。

 大型燃料電池システム「Bloomエナジーサーバー」(図2)を用いたBloom Energy Japanの電力供給サービスでは、10年間、電力コストを25円/kWhに固定している。「系統電力+非常用発電機」という当初の計画と比較すると、違いは2つある。第1に毎年のように変動する関西電力の電力料金とは異なり、価格変動が予測可能になることだ。計画的な企業運営が可能になる。第2に燃料電池システムの導入費用や毎月の燃料代(ガス)、管理・運営コストは、Bloom Energy Japanが負担するため、市場が支払う費用は燃料電池システムが生み出す電力を購入する電気代だけになる。

 非常用電源を新規に増設した場合*2)は、日常の電気料金に加えて、非常用電源の初期費用や燃料代、管理・運営コストを負担する必要がある。従って、関西電力の料金と同一でなくても価格優位性は失われない形だ。

*2) 出力1MWの燃料電池の導入契約を結んだ場合、中央卸売市場はこれを常時動作させる予定だ。「消防法上、スプリンクラーや避難用灯に必要な電力は非常用発電機が担う必要があるため、いずれにしても非常用発電機は新設する。しかし、出力は現状よりもかなり小さくなる」(同課)。

図2 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が2014年6月に導入した出力200kWの「Bloomエナジーサーバー」 出典:Bloom Energy Japan

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