東京の新しい卸売市場に電力と熱を供給、ガス圧力差発電も導入スマートシティ

東京ガスは2016年に開業予定の「豊洲新市場」を中心にした臨海地域に、電力と熱を供給する「スマートエネルギーネットワーク」を構築する。大型のガスコージェネレーションに加えてガス圧力差発電も導入する計画だ。自営の送電線とガス導管を敷設して、停電時にもエネルギーを供給できる。

» 2014年08月01日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京の台所を担う「築地市場」が施設の老朽化などを理由に、2016年に「豊洲(とよす)新市場」へ移転する予定だ(図1)。以前に東京ガスの製造工場が稼働していたため、ガスの製造工程で排出した有害物質による土壌の汚染が問題視されてきた。東京都が汚染対策を進める一方で、東京ガスはCO2排出量を大幅に削減できるエネルギー供給ネットワークの構築に着手した。

図1 築地市場から豊洲新市場への移転計画。出典:東京都中央卸売市場

 新市場を中心にした豊洲埠頭地区の再開発にあたっては、地元の江東区が「豊洲グリーン・エコアイランド構想」のもと、再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用した環境負荷の小さい街づくりを目指している。その構想に合わせて東京ガスが国土交通省や環境省の補助金を受けながら、最先端のエネルギー供給体制を地区内に展開する(図2)。

図2 豊洲埠頭地区のエネルギー供給計画。出典:国土交通省

 東京ガスは中核になる「スマートエネルギーセンター」の建設を7月から開始して、2016年5月に完成させる予定だ。このセンターには発電設備として大型のガスエンジンCGS(コージェネレーションシステム)を設置するほか、まだ実例が少ない「ガス圧力差発電」のシステムも導入する(図3)。

図3 「スマートエネルギーセンター」の設備。出典:東京ガス

 ガスエンジンCGSは発電能力が7MW(メガワット)級の高効率タイプで、新市場が入る区域5・6・7に電力を供給する一方、同時に排出する熱を利用して冷水と温水も各区域に供給することができる。災害などで停電が発生した場合でも、自立起動できる機能を備えている。

図4 ガス圧力差発電の仕組み。出典:東京ガス

 もう1つの電源になるガス圧力差発電システムは650kWの発電能力があり、未利用エネルギーによる発電方法として今後の導入拡大が期待されている(図4)。ガスも電力と同様に、導管の中を流す圧力を供給基地から順に引き下げていって家庭まで送り届ける。工場やオフィスビルには「中圧」で送るが、その中でも高めの「中圧A」と低めの「中圧B」の2種類がある。

 この中圧Aから中圧Bへ減圧する時のガスの流れを利用して、タービンを回して発電する仕組みだ。さらに発電と同時に冷熱が発生するため、これも利用して冷水を供給することが可能になる。

 東京ガスの試算では、未利用エネルギーを含めて効率的に電力と熱を供給できるスマートエネルギーネットワークを構築することによって、構築しない場合と比べるとCO2排出量が4〜5割も少なくなる見込みだ。地域全体の電力と熱の利用状況はエネルギー管理システムで集約して、センター内の冷凍機の稼働台数などを最適に制御する。

図5 「スマートエネルギーセンター」の外観イメージ。出典:東京ガス

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