これまでも電力会社との契約変更や自家発電設備の増強などに取り組んできた東京都が、新たに2020年に向けたアクションプログラムを発表した。電力会社に依存しない自立分散型のエネルギー供給体制を目指し、火力発電所の建設や大型蓄電池の配備などを推進する。
かねてから東京都の電力・エネルギー供給体制の改革に取り組んできた猪瀬直樹・新知事のもと、「2020年の東京」に向けた2013〜15年度のアクションプログラムがまとまった。プログラム全体は防災からスポーツまで8分野にわたるが、その1つとして「電力エネルギー改革の推進」を重点テーマにしたエネルギー戦略が盛り込まれた。
電力供給に関しては、福島県や新潟県の原子力発電所に依存していた状態からの脱却を図るために、東京都が主導して100万kW級の天然ガス火力発電所を都内に建設する。その一方で東京電力に対しては、老朽化した火力発電所の更新を促す方針だ(図1)。
さらに民間企業と共同でファンドを設けて、小規模(10万〜30万kW級)の天然ガス火力発電所の建設や再生可能エネルギーの導入を推進していく。震災からの復興を支援するため、福島県に石炭火力発電所を新設して首都圏に電力を供給できるように国と東京電力に働きかける。
電力改革と並ぶもうひとつの重点事業が、島しょ部における再生可能エネルギーの拡大である。中核になる八丈島をモデルにして、島内で使用するエネルギーを自給できる基盤の確立を目指す。特に八丈島では地熱発電の規模を大幅に増強させる計画で(図2)、地元や民間企業との連携によるプロジェクトを創設する。
このほか三宅島では太陽光発電、御蔵島では水力発電を拡大する構想がある。再生可能エネルギーの利用可能量が大きく残っている島しょ部を舞台に、他の地域に依存しない自立分散型のエネルギー供給体制を構築していく。
一方、企業や家庭のエネルギー供給体制の拡充にも取り組む。企業向けでは新たにガスコージェネレーションシステムとBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を組み合わせて導入する場合の支援制度を開始する予定だ。家庭にはHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と合わせてガスコージェネや蓄電池の導入を促進する制度を設ける。
インフラ面で注目すべき施策として、東京都が保有する施設に大型の蓄電池を配備して、電力需要がピークになる時間帯に電力を供給できる体制を強化する。すでに2万kW分の蓄電池を設置済みだが、2013〜15年度の3年間で規模を2倍の4万kWに増強する計画だ。地域全体のエネルギー管理をシステムで最適化する実証実験にも取り組む予定で、自立分散型のエネルギー供給が可能なスマートシティの実現を目指す(図3)。
以上の施策に対して2013年度に293億円、15年度までの3年間で640億円の予算を割り当てる。さらに2020年までにCO2排出量を2000年比で25%削減することを目標に、エネルギー効率の高いビルや住宅、電気自動車をはじめとする次世代自動車の普及を図る。このほか水質改善などの環境対策も含めると、エネルギー・環境関連で3年間に総額1230億円(うち2013年度は510億円)を投入する。
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