「廃棄物発電」で巨大都市をスーパーエコタウンに日本列島エネルギー改造計画(13)東京

人口1300万人を抱える東京都では、膨大な量の廃棄物が毎日排出されている。深刻な環境問題だが、見方を変えれば発電に使えるバイオマス資源が豊富に存在する。実際に東京都で年間に作られる再生可能エネルギーの約半分は「廃棄物発電」によるもので、水力や太陽光を大きく上回る。

» 2012年11月13日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京は人口だけではなくて住宅の数も日本で最も多く、太陽光発電システムの導入件数は愛知と埼玉に次いで全国で3番目である。さらに太陽熱を活用したシステムの導入も進んでいて、再生可能エネルギーの3分の2は太陽からもたらされている(図1)。

図1 東京都の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 ところが、この統計データには含まれていない再生可能エネルギーがある。大都市が排出する膨大な量の廃棄物(ごみ)を使った「廃棄物発電」である。

 東京都環境局の調査によれば、実際には都内の再生可能エネルギーのうち約半分が廃棄物発電によって作られている(図2)。発電に利用するのは家庭や事業所から出る可燃ごみで、焼却によって生じる熱で蒸気を作って発電する方式だ。

 東京23区の清掃工場20か所すべてに発電設備があり、年間に約10億kWhの電力を作り出す。これは東京電力が関東全域で販売する電力量の3.5%に相当する規模で、東京都は売電によって年間に60億円も稼いでいる。

図2 東京都の再生可能エネルギー導入状況(2012年3月調査、単位:テラジュール)。出典:東京都環境局

 廃棄物は可燃ごみだけではなく、プラスチックや木の廃材など産業廃棄物も大量にある。生ごみなどの一般廃棄物と比べると、重量にして4倍以上になる。この産業廃棄物の一部も発電用に生かしている。東京湾に面した埋立地にある「スーパーエコプラント」では、医療用を含む産業廃棄物を焼却して発電する(図3)。

図3 廃棄物発電所の「スーパーエコプラント」。出典:東京都環境局

 スーパーエコプラントは1日あたり650万トンにのぼる産業廃棄物を処理して、2万3000kWという大量の電力を作り出すことができる。電力会社が運用している小規模な火力発電所と同等の発電能力があって、一部は施設内の電力として利用し、残りは東京電力に供給している。

 さらに東京都の発電計画は加速していて、壮大なプロジェクトを計画中だ。発電能力が原子力発電所に匹敵する100万kWクラスの天然ガス発電所を建設すべく、東京湾に近い3か所を最終候補地として検討を進めている。

 この大規模な天然ガス発電所には、1600度の高温ガスを使った「コンバインドサイクル発電」を採用する予定である(図4)。コンバインドサイクル発電では東京電力が千葉県の富津火力発電所に導入した1500度の発電設備が現在のところ最先端で、それを上回る高温による火力発電を実現させる。これによりガスから電力へのエネルギー変換効率を通常の火力発電の1.5倍になる61%へ高めることができ、環境への負荷も軽減する。

図4 天然ガス発電所の計画概要。出典:東京都環境局

 それだけに建設費は1000億円を超え、年間の運転維持費は350億円程度かかる見込みだ。この発電所を40年間にわたって稼働できると仮定して、総額で1兆5000億円にのぼる大型のプロジェクトになる。

 これから事業者を公募して、6〜7年かけて建設するため、発電所の運転が始まるのは2020年くらいが想定されている。実現すれば、2030年代に向けて原子力発電に依存しない国のエネルギー供給体制が大きく前進する。

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