脱・原発依存を率先、メガソーラーや廃棄物発電を臨海地域に展開日本列島エネルギー改造計画(27)大阪

現在稼働中の原子力発電所の停止を強硬に求めているのが大阪府だ。原発依存度が高い関西電力から供給を受けている状況で、原発に依存しないエネルギー供給体制の構築が急がれる。面積が日本で2番目に小さい不利を克服するため、臨海地域を中心に再生可能エネルギーの拡大を図る。

» 2013年01月15日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 大阪府と大阪市は合同で「大阪府市エネルギー戦略」を策定するため、この1年間に22回におよぶ専門家会議を重ねてきた。当初は秋までに最終案をまとめる予定だったが、6月に中間の報告書を提出して以降、まだ具体的な実行計画を発表していない。その間に大飯発電所の再稼働が始まり、脱・原発依存に向けた実現性の高い計画を作る必要が生じたからだろう。

図1 大阪府の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 中間報告書では4つの方針が示された。第1が原発依存からの脱却だ。第2・第3の方針は電力会社と国を中心にしたエネルギー供給体制から分散型への移行、そして第4が再生可能エネルギーの推進である。すでに再生可能エネルギーの中では太陽光発電の導入量が全国で第6位の規模になっている(図1)。

 とはいえ大阪には地理上のハンデがある。面積が全国の自治体の中で香川県に次いで2番目に小さい。山林や河川も少ない。再生可能エネルギーの導入可能量を見ると、太陽光発電を除けば皆無に近い状態だ(図2)。

図2 大阪府の再生可能エネルギー導入可能量(カッコ内は2009年度の電力消費量に対する比率)。出典:大阪府環境農林水産部

 そうなると、採るべき戦略は限られてくる。太陽光発電を可能な限り拡大し、大都市ならではの資源である廃棄物を再利用する。さらに発電した電力を無駄なく効率的に活用するシステムの構築に力を入れていく。

 太陽光発電ではメガソーラーの誘致に積極的に取り組んでおり、現在でも府内の4か所で建設計画が進んでいる(図3)。いずれも2013年のうちに運転を開始する予定で、合計すると33MW(メガワット)の規模になる。

図3 大阪府が促進する主なメガソーラー設置計画(泉南市の事業者はNTTファイナンス・日本コムシス共同企業体に決定)。出典:大阪府環境農林水産部

 土地の面積が小さい中では、大阪湾に面した埋立地がメガソーラーを建設する有力な候補地になっている。すでに堺市の臨海地域には関西電力が10MWの大規模なメガソーラーを2011年9月から稼働中だ(図4)。

図4 堺太陽光発電所。出典:関西電力

 最近の取り組みでは大阪市の臨海地域でも、メガソーラーや廃棄物発電所を組み合わせた分散型のエネルギー供給システムの構築が進んでいる。大阪湾に作られた3つの人工の島「夢洲(ゆめしま)」「舞洲(まいしま)」「咲洲(さきしま)」に、再生可能エネルギーによる発電設備や大型の蓄電システムを組み込んだスマートコミュニティを建設中である(図5)。

図5 臨海部エネルギーネットワーク。出典:大阪市環境局

 このうち舞洲のごみ焼却工場では32MWの大規模な発電が可能になっている。加えて夢洲の廃棄物処分場に10MWのメガソーラーを2013年10月に完成させる。3つ目の咲洲では蓄電池の研究開発拠点として大阪府が設立した「バッテリー戦略研究センター」などの研究機関や大学、国際展示場を含む次世代の都市開発プロジェクトが始まっている。

 3つの島には電力を効率的に利用するためのシステムも構築する。EMS(エネルギー管理システム)を導入して各施設をネットワークで連携するほか、メガソーラーを建設中の夢洲では蓄電池を使って電力供給量を安定させ、送電ロスの少ない超電導ケーブルでメガソーラーからの電力を送り出す実証実験に取り組む(図6)。

図6 臨海部の夢洲における超電導ケーブル実証実験。出典:大阪市環境局

 大阪府と大阪市の新しいエネルギー戦略は現在推進中のプロジェクトをベースに、各地域に向けて飛躍的に発展させる内容になるはずだ。脱・原発依存を進めるためには明確な数値目標も必要になる。いま国の2030年に向けたエネルギー戦略が実現可能性を問われている中で、大阪府市の新戦略に注目が集まる。

2014年版(27)大阪:「脱・電力・熱・水素まで地産地消、大都市のエネルギーを分散型に」

2013年版(27)大阪:「グリーンベイ構想で東京の先を走る、湾岸に広がるメガソーラー群」

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