二酸化炭素を半減、航空機用のバイオ燃料自然エネルギー(1/2 ページ)

米ボーイングは2014年12月3日、バイオ燃料である「グリーンディーゼル」を用いた世界初のフライトテストに成功したと発表した。二酸化炭素排出量を半減できる他、現在のジェット燃料とコスト面で競争可能だという。

» 2014年12月18日 12時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 航空機は化石燃料(石油)を利用する最後の分野なのかもしれない。2012年には5兆4000億人kmの旅客、1800億トンkmの貨物が世界中を飛び回った*1)。これほどの規模の輸送事業が1種類のエネルギーに依存する状況はまずい。

 石油市場に振り回されることはもちろん、環境対応に課題がある。既に全世界で排出される温室効果ガス(二酸化炭素など)のうち、航空分野には約2%の責任がある。航空分野からの排出量は既に自動車の6分の1以上の規模に達しており、航空輸送量は年率5%で増加している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば温室効果ガスの排出量は2050年には現在の2〜5倍に達する。

*1) 1人が1回当たり平均1000km搭乗したとすると、延べ54億人が利用したことになる。旅客の4分の1、貨物の5分の1は米国の航空会社が輸送した。

国際的に排出量を半減する計画

 IATA(国際航空運送協会)は2020年以降、航空機の二酸化炭素排出量に上限を設けている。さらに2050年までに2005年比で二酸化炭素排出量を50%削減する目標も立てた。

 このような目標を実現する手法はさまざまだ。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用した機体の軽量化(関連記事)やエンジン性能の向上などといった従来の燃費向上策がある。電動飛行機(関連記事*2)や革新的な推進手段の開発なども進んでいる。それでもIATAの目標を達成するために最適なのは、現在の航空機技術に適合しやすく、効果が高いバイオジェット燃料の採用なのだという。

 2008年にはニュージーランド航空がナンヨウアブラギリ(南洋油桐、Jatropha curcas)由来の燃料を50%使用した試験飛行を実施、2009年にはコンチネンタル航空がナンヨウアブラギリ47.5%、藻類バイオマス2.5%を用いた試験飛行を進めた。2011年以降、複数社が一部の営業飛行にバイオジェット燃料を用い始めた。

 国内では2009年の日本航空に続き、2012年には全日本空輸と日本貨物空港が試験飛行を実施。いずれも複数のエンジンのうち、1発にバイオジェット燃料を混合した形だ。2020年の東京オリンピックに向けて本格運用を計画中だ。

 国内では藻類バイオマス技術を利用してバイオジェット燃料を合成する事業開発が進んでいる。JX日鉱日石エネルギーと日立プラントテクノロジー、ユーグレナの3社は2010年からユーグレナ(ミドリムシ)を利用したバイオジェット燃料の要素技術開発を開始した。IHIなど3社は2013年にA重油と似たバイオ油を作りだす屋外培養試験プラントの技術開発に成功している(関連記事)。

*2) エアバスは4座のハイブリッド飛行機、電動飛行機を開発中である。E-Fanプロジェクトと呼ぶ。2014年3月に初飛行した。

ボーイングが新燃料のテストに成功

 現在、航空機用の代替燃料として普及しているバイオジェット燃料は存在しない。こうした中、新しいバイオジェット燃料の開発も進んでいる。米ボーイングは2014年12月3日、バイオ燃料である「グリーンディーゼル」を用いた世界初のフライトテストに成功したと発表した。

図1 フライトテストの様子。機体は787型エコデモンストレーター(クリックで拡大) 出典:米Boeing

 同社がフライトテストを実施した機体は「787型エコデモンストレーター」(図1)。新技術をテストするための機体であり、現在、25種類の技術を実証中だ。

 フライトテストでは左エンジンに「グリーンディーゼル」を15%、既存のジェット燃料を85%混合して供給した。燃料を混合したのはEPICアビエーション。テストでは米連邦航空局とロールスロイス、プラット&ホイットニーが連携した。

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