「藻」のチカラで空を飛ぶ、光合成でA重油を製造自然エネルギー(1/2 ページ)

IHIなど3社が2011年から取り組む藻類バイオマス研究。2013年11月には屋外の試験プラントにおいて、安定的培養に成功した。A重油と似た油を取り出すことができるため、まずはジェット燃料を狙う。2020年までに大規模プラントを立ち上げて商用化を目指す計画だ。

» 2013年11月21日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 大規模な発電所の建設、運用が進む木質バイオマス。国内の林業を補完でき、新しいエネルギー源として注目されている。バイオマスには次世代技術もある。藻類バイオマスだ。二酸化炭素(CO2)を吸収し、光合成によって有機物、特に油分を合成する。つまり太陽光で燃料を作り出せる。

 IHIは2011年8月にジーン・アンド・ジーンテクノロジー、ネオ・モルガン研究所とIHI NeoG Algae合同会社を設立、藻類バイオ燃料事業に関する技術開発を共同で開始した。

 2013年11月にはIHI横浜事業所(横浜市磯子区)に設置した屋外培養試験プラントにおいてIHI NeoG Algae合同会社が油分を大量に含む緑藻を安定培養することに成功した。培養規模は面積にして約100m2(図1)。他の藻類や雑菌が混入しやすい環境だが、目的の緑藻を安定培養できたという。「今回は安定培養技術を確立した。藻類回収技術と油分抽出技術の研究開発も進めている。2020年までに油分を抽出する大規模プラントを立ち上げ商用化を目指す」(IHI)。

 「抽出できる油はA重油*1)と似た性質を持っているため、用途としてまずジェット燃料を狙っている。その他の用途を狙うため『MOBURA』というブランドを打ち出してゴム添加材剤や化粧品用基剤、ポリマー原料、潤滑油などの用途開発も進めている」(IHI)。

*1) A重油は、JIS K 2205で1種に分類されている炭化水素。動粘度が低く、加熱しなくても利用できる性質がある。法律上の区分を別とすれば軽油とほぼ同じ油だといえる。

図1 屋外培養試験プラントの外観。出典:IHI

 今回の成果は試験管のような制御された環境ではなく、屋外で安定培養できたことに意味がある。それでは培養した緑藻自体にはどの程度の価値があるのだろうか。結論から言えば、2つの優れた性質を備えた緑藻だ。増殖速度が高く、油を大量に合成できる。

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