水素エネルギー元年、街も工場も脱・石油が加速2015年の電力メガトレンド(2)(1/2 ページ)

トヨタ自動車の「MIRAI」に続いて、ホンダも2015年度中に燃料電池車を国内で発売する。燃料の水素を供給するステーションが街に広がり、工場では水素の製造技術が進化していく。再生可能エネルギーから水素を作って貯蔵する取り組みも始まり、「水素発電」の実用化が目前に迫る。

» 2015年01月06日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

連載第1回:「太陽光発電は安定成長へ、バイオマスと小水力が躍進する1年」

 水素が日本の重要なエネルギー源になることを、どれほどの人が想像できただろうか。政府が2014年6月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表したことを契機に、化石燃料に依存しない水素社会に向けて国全体が急速に動き出した。2015年は水素社会の構築が始まる元年になる。

 水素は酸素と反応して、電力と熱と水を作り出すことができる。その応用範囲は化石燃料よりも広い(図1)。すでに家庭には水素を燃料に発電する「エネファーム」が普及している。さらに水素で走る4人乗りの燃料電池車「MIRAI」をトヨタ自動車が発売したことで、ガソリンと同じように水素を供給するステーションが大都市圏から広がっていく。

図1 水素エネルギーの活用イメージ。出典:資源エネルギー庁

コンビニにも水素ステーションを併設

 セブン-イレブン・ジャパンは2015年度中に東京都と愛知県で、水素ステーションを併設したコンビニエンスストアの新店舗をオープンする計画だ(図2)。水素の製造・販売で実績が豊富な岩谷産業と共同で展開する新プロジェクトである。燃料電池車の普及台数は2015年には1000台にも満たないが、トヨタのMIRAIには予想を超える引き合いがあり、次世代のエコカーに対する期待感は大きい。

図2 水素ステーションを併設したコンビニエンスストアの店舗イメージ。出典:岩谷産業、セブン-イレブン・ジャパン

 トヨタに続いてホンダも2015年度中に燃料電池車の市販を予定している。すでにリース方式では4人乗りの「FCXクラリティ」を提供しているが、市販車は5人乗りに拡充してトヨタのMIRAIに対抗する構えだ。ホンダは世界で初めてパッケージ型の「スマート水素ステーション」も開発した(図3)。小型のステーションの内部で電力を使って水から水素を作ることができる。

図3 パッケージ型の「スマート水素ステーション」(左)とリース販売限定の燃料電池車「FCXクラリティ」(右)。出典:ホンダ

すでに燃費はハイブリッド車と同等

 水素社会に向けた大きな課題の1つは、水素の価格を安くすることにある。現在のところ天然ガスなどの化石燃料から水素を取り出す製造方法が主流のため、ガソリンよりも割高だ。ただし低価格化の動きは、すでに始まっている。

 国内のガソリン市場で3割以上のシェアを持つ最大手のJX日鉱日石エネルギーは水素市場の拡大を見込んで、2015年3月までに11カ所の水素ステーションを開設する計画だ(図4)。その第1号を神奈川県でオープンしたのに合わせて、販売する水素の価格を1キログラムあたり1000円(税抜き)に設定した。

図4 ガソリンスタンド併設型の水素ステーション。出典:JX日鉱日石エネルギー

 燃料電池車は1キログラムの水素で100キロメートル以上の走行が可能なことから、1キロメートルあたりの燃費は10円以下になる。この燃費は現在のハイブリッド車と同等の水準で、政府がロードマップに掲げた2020年の目標を早くもクリアしている。さらに水素の市場が拡大して価格が下がると、低燃費のガソリン車(1リットルあたり20キロメートル程度の走行が可能)よりも安くなって、燃料電池車の普及にはずみがつく。

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