自動車3社が水素に支援、ステーション普及を助ける電気自動車

トヨタ自動車と日産自動車、ホンダの3社は2015年2月、水素ステーションの整備促進に向け、共同支援に乗り出すことで合意したと発表。建設費用や水素のコストに対して支援するのではなく、ステーション運営に必要な費用の一部を負担する形で進める。2015年夏までに具体的な内容を固める。

» 2015年02月13日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 水素ステーション普及が計画通りに進んでいない。2015年2月10日時点で営業を開始した商用ステーションは7カ所(図1、図2)。ガソリンスタンドのようなネットワークを形成する段階には至っていない。主要企業が共同で発表していた「2015年度内に四大都市圏を中心に100カ所程度の水素供給場所を確保する」という計画の達成はたやすくないだろう*1)

*1) 2015年4月末までにさらに約10カ所が営業を開始する予定だ。

図1 営業中の商用水素ステーション
図2 日本初の商用設備「尼崎水素ステーション」 出典:岩谷産業

自動車会社が従来のわく組みを越えて支援

 そこで燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を製造、販売するトヨタ自動車と、2015年度内に燃料電池車の発売を予定するホンダ(関連記事)、燃料電池車の市場投入を表明している日産自動車の3社が、水素ステーション支援に乗り出した。2015年2月12日、燃料電池自動車用の水素ステーションの整備促進に向けた支援策を検討し、共同で取り組むことに合意したと発表。

 従来の自動車メーカーの考え方は、燃料電池車を投入することに専念し、インフラはエネルギー関連企業に任せるというもの。2015年1月にMIRAIの増産を発表した時点では「当社はインフラ企業ではないので、現時点では水素ステーションの支援は考えていない」(トヨタ自動車)という立場だったが、今回、考え方を変えた形だ。

建設ではなく運営が対象

 水素ステーションの整備促進を支援する手法は複数ある。政府は建設に必要な費用の一部を補助金で支援している。水素自体の価格はエネルギー関連企業側が積極的に引き下げた(関連記事)。政府が予測していた2020年時点の価格に一気に到達した。

 残るのは水素ステーションの運営費用だ。「水素ステーションの運営で予測が難しいのは利用者の数だ」(豊田通商)。計画中の水素ステーションの多くは、1時間当たり5〜6台に水素を供給できる能力を備えている。しかし、トヨタ自動車がMIRAIの増産計画(関連記事)に従って生産を進めたとしても、国内普及台数は2016年中に2000台以下。ホンダの年間生産台数は現時点では不明であり、各燃料電池車の月間平均走行距離についてのデータもない。それでも「充填」する車の台数が水素ステーションの能力を大きく下回ることは予測できる。

 商用水素ステーションを完成させたある企業は、ステーションに担当者を張り付かせる形を採るかどうか未定であるとコメントしている。燃料電池車が普及するまで、水素ステーションの運営にコストを掛け続けることが負担になっていることが分かる。

 このような背景もあって、自動車3社の支援の形は、水素ステーションの運営に係る費用の一部負担などを目指すことになった。「運営費用といってもさまざまな項目がある。2015年年央(夏)をめどに支援の範囲を決定し、3社が足並みをそろえた形の支援策を打ち出す」(ホンダ)。

 なお、自動車メーカーが共同でインフラ支援策を打ち出すのは今回が初めてではない。例えば、電気自動車では充電インフラネットワークサービスに対して自動車4社(トヨタ自動車と日産自動車、ホンダ、三菱自動車)が共同で取り組んでいる(関連記事)。

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