水素ステーションの商用サービスが始まる、兵庫県に日本で初めて電気自動車

2015年に市販が始まる燃料電池車の普及に向けて、兵庫県の尼崎市に日本初の商用水素ステーションがオープンした。ガス事業の岩谷産業が開設したもので、1時間に6台の燃料電池車に水素を充てんできる。2015年度中に東京・名古屋・大阪・福岡の4大都市圏を中心に20カ所に展開する。

» 2014年07月16日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 トヨタ自動車が2014年度中に燃料電池車の市販を決めたことで、水素・燃料電池をめぐる動きが活発になってきた。燃料電池車に欠かせない水素ステーションの実証設備が大都市圏に設置されてきたが、いよいよ商用のサービスが始まる。岩谷産業が兵庫県の尼崎市にある中央研究所の敷地内に、日本で初めての商用水素ステーションを7月14日に開設した(図1)。

図1 「尼崎水素ステーション」の外観。出典:岩谷産業

 「尼崎水素ステーション」は1時間あたり340立方メートルの水素ガスを充てんする能力があり、標準的な燃料電池車で6台を満充てんの状態にすることができる。空の状態から満充てんまで3分以内で済み、通常のガソリン車と変わらない所要時間で充てんが完了する。

 燃料電池車に充てんする水素は700気圧の高圧に圧縮したガスの状態で車載の水素タンクに注入する方式だ。岩谷産業はドイツのリンデ社が開発した小型の圧縮機を搭載した充てんシステムを採用した(図2)。横幅が約4メートルのコンテナにパッケージ化されていて輸送できる点が特徴である。これから岩谷産業が他の地域に建設する水素ステーションにも同じシステムを採用する方針だ。

図2 水素の充てんシステム。出典:岩谷産業

 尼崎市に開設した第1号の水素ステーションには、大阪府の堺市にある液体水素の製造プラントからタンクローリー車で水素を供給する。この製造プラントは岩谷産業が関西電力グループなどと共同で2006年に運転を開始した「ハイドロエッジ」の工場である(図3)。1時間あたり6000リットルの液体水素を製造する能力がある。

図3 液体水素の製造プラント。出典:岩谷産業

 岩谷産業はトヨタ自動車の本社がある愛知県の豊田市に水素ステーションの実証設備を2013年に開設している。このほかにもホンダと共同で、太陽光発電による電力を使って水素を製造・供給する「ソーラー水素ステーション」を埼玉県庁の敷地内に設置して実証中だ(図4)。首都圏でも液体水素を製造するプラントが千葉県の市原市で2009年から運転を開始している。

図4 埼玉県庁の「ソーラー水素ステーション」。出典:岩谷産業

 トヨタ・ホンダ・日産の自動車メーカー3社を含む13社が2015年度までに東京・名古屋・大阪・福岡の4大都市圏を中心に100カ所の水素ステーションを展開する構想を進めている。参加メンバーの1社である岩谷産業は20カ所を建設する計画で、尼崎市の水素ステーションが第1号になる。

 尼崎水素ステーションは大阪国際空港と関西国際空港の中間地点にある。2つの空港それぞれに水素ステーションを設置する計画があるほか、2016年度には両空港を結ぶ燃料電池バスの運行も予定されている。

テーマ別記事一覧

 電気自動車   都市・地域 


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.