ホンダの燃料電池車、「小型化」「安全性」で目指すもの電気自動車(1/3 ページ)

ホンダは2014年11月17日、燃料電池車「Honda FCV CONCEPT」を公開した。2015年度中に国内で一般販売を開始する。小型化によってパワートレインをエンジンルーム内に収め、セダンタイプで5人乗りの車に仕上げたことが特徴だ。

» 2014年11月18日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 2014年11月17日、ホンダは燃料電池車「Honda FCV CONCEPT」を報道関係者に公開、2015年度中に国内で一般販売を開始すると発表した(図1)。コンセプトカーではあるものの、完成度は高いという*1)。販売価格は非公開。「当社がリース販売中の燃料電池車『FCXクラリティ』よりも、かなりのコストダウンができており、幅広いユーザー向けの車として販売できるよう努力している」(ホンダ)とした。

 5人乗りが可能なセダンタイプの燃料電池車であり、水素を「満タン」にすると700km以上(JC08モード)の走行が可能。水素充填時間は3分と短く、ガソリン車並である。

 Honda FCV CONCEPTから最大9kWの電力を取り出すことが可能な外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」も同時に公開。

 ホンダは水素社会を実現するために「つくる」「つかう」「つながる」という3つの取り組みを挙げている。つくるは後ほど紹介するパッケージ型スマート水素ステーション、つかうが今回のコンセプトカー、つながるが外部給電器だ。

*1) ホンダは燃料電池車の発売をこれまで2015年内に開始するとしていた。「(2016年3月末まで)発売に3カ月の含みを持たせることで、より完成度を高めて販売を開始したい。燃料電池スタックを安定して量産できるようにする必要があるものの、特定の部品の開発が遅れているということはない。米国と欧州の発売時期は2016年度になる」(ホンダ)。なお、同車が米GMと協業して開発する燃料電池車技術が実用化されるのは「2020年以降であり、今回の車はホンダの技術だけで作られている」(同社、関連記事)。

図1 「Honda FCV CONCEPT」と「Honda Power Exporter CONCEPT」(左)の外観(クリックで拡大)

パワートレイン小型化が最大の特徴

 特徴は何か。「パワートレインの小型化により、車室を広くすることができたことだ。それにより、5人がゆったりと乗車できる」(ホンダ)*2)。ここでいうパワートレインとは、燃料電池や燃料電池の制御ユニット、走行用モーター、コンプレッサーなどを一体にまとめた装置。「世界で初めてセダンタイプのエンジンルームに搭載できたことが、技術的な優位性だ」(同社)。

 図2にHonda FCV CONCEPTにおける主要部品のレイアウトを示す。図2の左にパワートレインが配置されている。「リチウムイオン蓄電池は、ブレーキの回生電力を蓄えたり、始動時に必要な電力を賄うためのものであり、蓄電池だけを用いた走行は考えていない」(同社)。ホンダは今回初めて、水素タンクの圧力を従来の35MPaから70MPaに変えた。「タンクの容量は公開していないものの、これまでより小型化が進んでいる」(同社)。

*2) 同車が2008年にリース販売を開始した燃料電池車「FCXクラリティ」の定員は4人。燃料電池セルスタックを車室内に配置していたため、スペースにあまり余裕がない。FCXクラリティでは、容量171Lの水素タンクに35MPa(350気圧)で水素を充填する。10/15モードの走行距離は620km。Honda FCV CONCEPTの性能はFCXクラリティを上回っていることが分かる。

図2 主要部品のレイアウト(クリックで拡大) 出典:ホンダ
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