ホンダの燃料電池車、「小型化」「安全性」で目指すもの電気自動車(3/3 ページ)

» 2014年11月18日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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水素ステーションの圧力をどうする

 ホンダは水素の製造に必要な全ての機材を一体化した「パッケージ型スマート水素ステーション」を開発し、2014年9月からさいたま市、岩谷産業と共同で実証実験を開始している。今回はHonda FCV CONCEPTと並べて見せた(図7)。

 同ステーションは従来のホンダのステーションと比較して、設置面積を25分の1にでき、従来の数週間の工期が1日に短縮できるなど、水素供給インフラの普及促進に役立つ。

 問題は水素の充填圧力だ。パッケージ型スマート水素ステーションは主にFCXクラリティを対象としているため、充填圧が35MPaと低い。Honda FCV CONCEPTの70MPaに達しない。これでは「満タン」にならない。

 「パッケージ型スマート水素ステーションの核は当社が開発、製造した高圧水電解システムにある。高圧水素を直接製造できるシステムだ。さいたま市の実証実験では35MPaとしたが、70MPaを実現できることは確認済みだ」(同社)*4)

 ホンダによれば圧力を高めることよりも、ステーションに対する適用法規が課題になるのだという。さいたま市の設置現場は工業地域に分類されるため、制約が少なかったものの、今後商業地に設置する場合には規制緩和が必要だとした。

*4) 圧力を高めるとステーション内部の機器の耐圧を高める必要があるため、現在の7.8m2という設置面積に収めようとすると、さらなる技術開発が必要になると考えられる。

図7 ホンダ代表取締役社長の伊東孝紳氏。左側の銀色の大きな「箱」がパッケージ型スマート水素ステーション(クリックで拡大)

V2L規格はどこまで広がるか

 冒頭で紹介した外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」の寸法は830×380×480mm。重量は60kg以下だ(図8)。「トランクに収まるサイズという制約からこの寸法となった」(同社)。トランクに積むと他の荷物のための余地がなくなることや、重量物であるため、常時搭載するというより、必要に応じて利用する機器になるだろう。

 「100Vのコンセント6個の他、200Vを1個備えているため、空調機器や電磁調理器などこれまで利用できなかった家電を使うことができるようになる」(同社)。100V部分が3kW、単線三相100V/200V部分が6kWという割り振りだ。インバータ方式で交流を作りだしているため、PCなどの精密な電気製品も接続できる。

 燃料電池車から取り出すことができる電力は、FCXクラリティを使った場合、既に一般家庭の6日分(60kWh)ある(関連記事)。災害時などの非常用電源として適しており、企業のBCP対策にも役立つ装置だ。ガソリンのように「腐る」ことがなく、使用時に排気ガスを放出しないため、ガレージで利用することも可能だ。利用場所や用途を選ばない。

 自動車メーカーがそれぞれ異なる外部給電器を自社の燃料電池車・電気自動車向けに製品化し続けると、非常時に組み合わせの問題が起きて使いにくいだろう。そこで、今回は電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)が定めた「電動自動車用充放電システムガイドライン」(V2Lガイドライン)に準拠し、他社の車とも接続できるようにした*5)

*5) 「燃料電池車から大電力を取り出すインタフェースは、今後(CHAdeMOなどの)充電用の標準コネクタになると考えている。FCXクラリティではトランク内左奥にあったコネクタを、Honda FCV CONCEPTでは車体後部左に移したのもそのためだ」(同社)。

図8 Honda Power Exporter CONCEPTの外観 燃料電池車との接続に必要なケーブルやハンドルを筐体内部に格納できる
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