「おんせん県」は地熱発電だけじゃない、山と海からバイオマスと太陽光エネルギー列島2014年版(44)大分(2/2 ページ)

» 2015年02月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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県内のエネルギー自給率100%へ

 もう1つのプロジェクトは再生可能エネルギーの電力買取などを手がけるエナリスが地域の農林水産業と連携して推進する。発電能力は2.5MWと小さめながら、発電に伴う温水や焼却灰を地域内で再利用する点に注目が集まっている。バイオマス発電に必要な蒸気を冷却した後の温水をウナギの養殖事業に提供する一方、焼却灰は花の栽培などに利用する計画だ(図5)。

図5 バイオマス発電所を中心にした第1次産業と再生可能エネルギー事業の連携。出典:エナリス

 発電した電力はエナリスが買い取ったうえで、地域の公共施設などに供給することになっている。このような農林水産業(第1次産業)と連携した地産地消型の再生可能エネルギー事業を「佐伯モデル」と位置づけて、同様の仕組みを全国各地に展開していく構想もある。

 これまで大分県の再生可能エネルギーは地熱発電が中心で、固定価格買取制度でも地熱の規模は全国で第1位だ(図6)。ただし地熱発電は運転開始までに時間がかかるうえに、地元の理解を得られないケースも少なくない。

 大分県では2013年から「おんせん県おおいた」をキャッチフレーズに観光産業の拡大に乗り出した。地熱発電によって温泉資源の枯渇を心配する声が地元には根強くある。その点でバイオマス発電は地域の振興を兼ねて推進しやすいことから、今後さらに導入量を拡大できる余地が大きい。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 大分県内では沿岸部の工業地帯を中心に大規模なメガソーラーも続々と運転を開始している。その中でも丸紅が2014年3月に完成させた「大分ソーラーパワー」は現時点で日本最大のメガソーラーである(図7)。発電能力は82MWで、年間の発電量は8700万kWhに達する。一般家庭で2万4000世帯分の使用量に匹敵する規模だ。

図7 「大分ソーラーパワー」の全景。出典:丸紅

 同じ工業地帯の一角では三井造船が17MWのメガソーラーを運転中で、さらに敷地内に45MWの太陽光発電設備を増設する工事を進めている。地熱発電に加えて沿岸部の太陽光発電と内陸部のバイオマス発電が拡大を続けながら、大分県のエネルギー自給率は100%に近づいていく。

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2016年版(44)大分:「資源に影響を与えない地熱発電所、日本一の温泉県で動き出す」

2015年版(44)大分:「地熱発電でトップを独走、太陽光やバイオマスを加えて自給率5割へ」

2013年版(44)大分:「火山地帯で増え続ける地熱発電、別府湾岸には巨大メガソーラー群」

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