小売自由化で求められる、新たな顧客サービスの仕組み迫りくる電力・ガスシステム改革(2)(2/2 ページ)

» 2015年03月02日 13時00分 公開
[川島 浩史/SAP Japan,スマートジャパン]
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ビジネスのマルチサービス化と顧客戦略

 今後の日本の自由化市場においても、電力やガスといった「マルチエネルギー化」のみならず、さまざまな提携や付帯サービスによる「マルチサービス化」が進むことは確実である。すなわちB-to-C(Business to Consumer)の観点から、さまざまな業種の要素がからみ合ってくる。

 実際にグローバルな公益企業の話を聞くと、小売業界や通信業界などの知見を活用した顧客戦略をとっている例が多い。特に顧客ターゲティングや顧客動向分析などの領域である。どのようなケースがあるか具体的に見てみよう。

 ある大手玩具メーカーでは、自社ブランドに対する顧客の愛着度に注目した。自社製品・サービスの購入額や頻度に応じて顧客を分類し、それに応じたサービスを提供していった。顧客を自社の“ファン”にする施策を実行していき、その結果、2年ほどで37%の売り上げ増につながった。

 大手通信事業者では、加入者をタイプごと(解約予備軍、優良顧客など)に分類する予測モデルを構築した。それらのデータをもとに適切な提案や矢継ぎ早のキャンペーンを展開することにより、顧客を“優良顧客”へ仕立てあげていった。これにより月次で平均15%の解約削減に成功している。

 このように顧客取引情報を正確に把握して、そこから予測モデルを構築し、そして戦略の実行へ移していく。一連のPDCA(Plan-Do-Check-Action)を迅速・確実に行うことで、ビジネスの大幅な改善が可能になる。これらの要素は日本の小売市場でも必要になり、それを支えるITの重要性はさらに増していくだろう。

 小売ビジネスの要になるITがCISであることに変わりはない。しかし求められる要件は従来と比べて大きく広がってくる(図2)。料金計算の領域では、顧客戦略の迅速な反映が求められる。さらに顧客管理とも密な連携が必要になる。取引データから顧客の動向を予測・分析して、矢継ぎ早に顧客戦略を実行し、適切な顧客にアプローチする、といった具合である。

図2 今後の小売事業で必要になる次世代のCIS。出典:SAP Japan

 海外事例から見る今後の日本市場で必要になる取り組みとITシステムの要件は、以下の点を連動して実行できることである。

  • 顧客動向の迅速な予測と分析
  • 顧客戦略の迅速、確実な実行
  • 顧客エンゲージメント

 次回は発電・送配電の領域を対象にして海外の動向を取り上げる。

第3回:発電・送配電の領域における海外の取り組み(3月下旬に掲載予定)

著者プロフィール

川島 浩史(かわしま ひろし)

SAPジャパン株式会社公益事業統括本部 電力・ガスシステム改革支援室 室長。日本市場における公益業界の事業開発に従事。SAPグローバルチームと密に連携し、各種市場・事例調査や、公益業界に向けた最新ソリューションを日本に展開する役割を担っている。


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