「鉄と魚のまち」がエネルギーのまちへ、太平洋の波と風を電力にエネルギー列島2015年版(3)岩手(2/2 ページ)

» 2015年05月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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製鉄所で木質バイオマスの混焼発電も

 釜石市を代表する存在の「釜石製鉄所」では自家発電設備を利用して木質バイオマスの活用に取り組んでいる。製鉄所の構内には石炭火力発電所が2000年に稼働して、発電能力は電力会社の発電所に匹敵する14万9000kW(キロワット)もある。年間の発電量は6億7000万kWhにのぼり、18万世帯分を超える供給能力を発揮する。この石炭火力発電所に木質バイオマスを混焼できる設備を2010年に追加した(図6)。

図6 「釜石製鉄所」の木質バイオマス混焼発電設備。出典:新日鉄住金

 周辺地域の山林で発生する未利用の木材を年間に7000トン調達して、石炭に3%程度の比率で混ぜて燃料に利用している。さらに木質バイオマスの比率を高めるために、燃料のチップを細かい粒に加工できる破砕設備を導入して2015年6月から運転する予定だ。石炭に混ぜる木質バイオマスの使用量を徐々に増やしながら、最終的には混焼率を20%まで引き上げることを目指す。

 岩手県では豊富な森林資源を生かして、木質バイオマスの導入量を全国で最大にする計画を推進中だ。固定価格買取制度の実績では、運転中の発電設備の規模がバイオマス全体で10位に入っている(図7)。最近では林業が盛んな花巻市で木質バイオマス発電所の建設が始まるなど、今後の導入量の拡大も見込める。

図7 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 その一方で水力の導入量が大きく伸びて1位に躍り出た。山岳地帯に数多くのダムがある奥州市で新しい水力発電所が2014年7月に運転を開始したからだ。J-POWER(電源開発)が岩手県の企業局と共同で建設した「胆沢(いさわ)第一・第三発電所」である(図8)。

図8 「胆沢第一・第三発電所」の全景。出典:J-POWER

 J-POWERが運営する第一発電所と企業局の第三発電所が同じ建屋の中で共存して効率化を図る。第一発電所は大小2種類の水車発電機を組み合わせて1万4200kWの発電能力がある。第三発電所は発電能力が小さい1基を使って1500kWの電力を供給する。合わせて3基の発電機にはダムから同じ水圧管路で水を引き込む構造になっていて、105メートルの落差の水流で発電する仕組みだ。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北海道・東北 Part1−」をダウンロード

2016年版(3)岩手:「地熱発電を雪深い山の中で、海岸では波力発電に挑む」

2014年版(3)岩手:「森林から牧場までバイオマス全開、メガワット級の発電設備が増殖中」

2013年版(3)岩手:「風力やバイオマスで自給率35%へ、復興を加速するエネルギー拡大戦略」

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