環境省は、日本において二酸化炭素の最大排出事業者である、電気事業における地球温暖化対策の枠組みについて、有識者に公開ヒアリングを行った。
日本政府は2030年の温室効果ガスの削減目標について、2013年比で26%とする案を国の審議会に提出したが、最大の排出事業者である電力事業者については、日本全体の約4割を占めるなど最大の排出源であるにもかかわらず、地球温暖化対策についての枠組み作りが進んでいない状況である。一方、2016年の電力小売り完全自由化や2020年の発送電分離により、新たな電力関連企業が数多く生まれることが想定される中、これらの企業についても、温室効果ガス排出を抑制するような仕組みを機能させなければ、中長期的な削減目標の達成は難しい。
これらを背景に環境省では、電力事業者が地球温暖化対策を進めるために最適な枠組み作りを進めており、有識者に対する公開ヒアリングを実施した。2015年5月1日には、政府の各種審議会などにも参加している、早稲田大学大学院 法務研究科 教授の大塚直氏と、東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授の橘川武郎氏を招き、それぞれの意見を聞いた(図1)。
大塚氏は総論として以下の6つのポイントを指摘する。
新たな枠組みについて大塚氏は「基本的には国が定める温暖化対策計画の一部として位置付けられるように、目標に沿ったものとしていくべきだ。基本的には電力事業者の全てが参加するような形にしていかなければならない。そのためには枠組み参加のインセンティブの付与や、参加しない場合のサンクション(制裁)を設ける必要がある」と述べている。
責任主体としては「発電事業者を責任主体とした場合、一般電気事業者と新規参入事業者の間でイコールフッティングの確保が難しい。その意味では小売事業者を責任主体とすべきではないか。枠組みに参加する個々の小売事業者が電力業界と同じ目標を抱えるようにし、各事業者が目標を達成すればよい」と述べている。
これらの目標が達成できず超過した場合については、各事業者が以下の3つの方策から排出権を調達する仕組みを提案する。
大塚氏は枠組みを進める上で「PDCAサイクルを回し実効性を確保しなければならない。また枠組みに参加しないフリーライダーなどが生まれないような公平な仕組み作りが必要だ。公的な発電源証明やトラッキングシステムなどの導入も検討すべきだ」と意見を述べた。
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