ゼネコンが野菜を作る時代に、人工光を使う植物工場でレタスを栽培スマートアグリ

新たな収益基盤の確保に向け、製造企業などが事業化を進める植物工場を利用した野菜生産。新たに大手ゼネコンの大林組も参入を決めた。野菜工場のフランチャイズ事業を展開するスプレッドと事業提携し、工場の建設や完全人工光を利用する植物工場でレタスなどの生産に乗り出す。

» 2015年05月12日 13時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 大林組は植物工場を使った野菜生産事業に参入する。野菜工場事業を手掛けるスプレッドとの事業提携および同社が開発した完全人工光型植物工場「Vegetable Factory」のフランチャイズ事業についての協議を開始する(図1)。

図1 スプレッドが手掛ける野菜工場 出典:大林組

 協議の主な内容は、生産性の高い完全人工光型植物工場の構築に向けた共同研究および技術開発と、スプレッドが計画する野菜工場のフランチャイズ事業における大林組の工場建設分野での事業協力。さらに同フランチャイズ事業に大林組が植物工場を活用した野菜生産事業者(フランチャイジー)として参画することの3点となる。

 2015年4月から詳細な協議を開始し、同年12月末をめどに事業提携契約とフランチャイズ契約を結ぶ予定だ。契約締結後は両社で首都圏での大規模人工光型植物工場の建設を検討し、2017年度までに日産3万株規模のレタス工場(延べ面積5000〜6000平方メートル)の稼働を目指す。

図2 完全人工光型植物工場での野菜栽培の様子 出典:大林組

 スプレッドは世界最大規模の完全人工光型植物工場の運営を行う野菜工場事業の大手で、2014年11月にフランチャイズ事業を立ち上げている。同事業では今後5年間で現在2万株のレタス生産を50万株まで拡大することを目標としており、国内外で事業展開を進めている(図2)。

 大林組は収益基盤の多様化を図るため、建設事業で培ったノウハウを生かせる分野として以前から植物工場を活用した農業分野へアプローチしてきた。植物工場の最適な環境構築や省エネルギー化に関する研究開発にも取り組んでいる。スプレッドが手掛ける完全人工光型植物工場は、天候の影響を受けにくい次世代農業として注目される一方で、低コスト化や高効率化などのさらなる技術開発が求められている。そこで大林組の持つ生産施設の設計・施工実績に基づくさまざまなノウハウを活用する狙いだ。

 今後、大林組がフランチャイジーとなり、スプレッドが一括して販売を受託するスキームを組むことで、野菜の生産量の拡大や、両社の収益増加を見込んでいる。同社では既に2015年度中に千葉県香取市で、年間18トン規模を目標にミニトマトを栽培する太陽光型植物工場の事業化を決定している。これに今回のスプレッドとの新たな事業を加え、農業関連事業の年間売上高を5年後に30億円にすることを目指す。

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