電力使用効率を2000倍へ、次世代通信規格「5G」に組み込まれる省エネ技術省エネ機器(1/2 ページ)

エリクソン・ジャパンは2015年5月19日にメディア説明会を開催し、標準化が始まる次世代移動体通信規格「5G(第5世代移動通信)」において、大きな目標の1つとなる「省エネルギー化」の動きについて紹介した。

» 2015年05月20日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 2020〜2025年に実用化が進むと見られる5Gは、4GであるLTEに比べ、100倍以上の伝送速度、1000倍以上の通信容量を実現する次世代の移動通信とされ、世界各地で技術開発が進められている。このように通信速度や容量などの通信性能が大きく向上する一方で、5Gでは大幅な省エネルギー化も組み込まれていることが特徴となっている。

電力使用効率を2000倍へ

 エリクソンなども参加する、移動通信事業者を中心とした国際業界団体であるNGMN(Next Generation Mobile Networks) Allianceが2015年2月に発行した「5G White Paper」では、5Gの要求条件の1つとして「今後10年間でトラフィックが1000倍になっても、ネットワーク全体の消費電力を現状の半分にする必要がある。これは、今後10年間で電力効率を2000倍にすることになる」としている。

 5Gについては、国際電気通信連合(ITU)や、モバイル通信の技術を決める団体「3GPP」などで本格的に標準化の動きが進みつつあり、さまざまな仕様策定が行われる動きが出ているが、その中でも電力使用効率については、新たな指標として標準仕様に組み込まれる見込みだといわれている(図1)。

photo 図1:5Gで実現が期待される技術要件。電力効率が技術的にも大きな目標に据えられている(クリックで拡大)※出典:エリクソン・ジャパン

 その背景として、エリクソン・ジャパン CTO(チーフテクノロジーオフィサー)の藤岡雅宣氏は、従来の通信基地局がトラフィック量に関わらず、多くの電力を使用している点を指摘する。

photo エリクソン・ジャパン CTO(チーフテクノロジーオフィサー)の藤岡雅宣氏

 「基地局の設計はピークトラフィック要求をベースに設計されているため、定常的に大きな電力を使用する形となっている。トラフィック量が変化し出力の増減があったとしてもその影響度は低い。通信が利用されていない状況でも常に一定量の大きな電力消費が行われている状況だといえる」と藤岡氏は述べる。

 一方、基地局の規模で見た場合、1キロメートル以上電波を飛ばす「Macro」、数百メートル規模の「Micro」、数十メートル規模の「Pico」の消費電力は、それぞれ1桁違う状況で、設置数はPicoやMicroが大きくなるが、消費電力量は圧倒的にMacroが大きい状況になっているという(図2、図3)。

photo 図2:基地局タイプと消費電力量の内訳(クリックで拡大)※出典:エリクソン・ジャパン
photo 図3:LTE基地局の構成と消費電力量の内訳。左図が設置基地局の数で右図が消費電力量の内訳。数は少ないが消費電力量はMacroが大きな比率を占めていることが分かる(クリックで拡大)※出典:エリクソン・ジャパン

 当然、採用する半導体デバイスや回路技術の進化による消費電力の低減なども進めていくが、ネットワーク全体で抜本的に消費電力量を下げるためには「新しい設計思想が必要になる」と藤岡氏は主張する。

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