再生可能エネルギーの出力変動を水素で解決、貯蔵した水素で「MIRAI」も走る自然エネルギー(1/2 ページ)

不安定な再生可能エネルギーの出力をどう制御するかは大きな課題だ。九州大学が実施している「スマート燃料電池社会実証」では、こうした課題の解決策として再生可能エネルギーを水素として貯蔵する実証実験がスタートしている。さらに貯蔵した水素を燃料電池車に供給するなど、水素社会の実現に向けた先進的な取り組みだ。

» 2015年05月21日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 再生可能エネルギーの導入を促進する上で、天候に左右されやすい太陽光や風力などの出力が不安定なエネルギーの制御は大きな課題だ。電力系統で吸収しきれない余剰電力が発生した場合でも、電力需給のバランスを最適に調整する必要がある。その解決策の1つとして期待されるのが、余剰電力を水素として貯蔵する技術だ。

 水素や再生エネルギーの導入に関して全国をリードする福岡県では、2014年度から九州大学が「グリーンアジア国際戦略総合特区」による国からの支援を受け、「スマート燃料電池社会実証」(図1)を開始している。この中のプロジェクトの1つとして、再生可能エネルギーで製造した水素の貯蔵と利用に関する実証実験が進められている。

図1 「スマート燃料電池社会実証」の概要 出典:福岡県

 この実証実験の目的は2つある。1つが太陽光や風力などの不安定な発電形態で得られた再生可能エネルギーで水素製造システムを稼働させ、得られた水素を貯蔵することにより、エネルギー供給の平準化を行うというものだ。

 実証実験で利用する水素製造システムは、日立造船、太陽日酸、九電みらいエナジーの3社が共同開発した「ハイドロスプリング」(図2)が用いられている。水素の製造方式は固体高分子型の水電解で、製造能力は1時間当たり最大1立方メートル。2015年3月末に九州大学に納入された。

図2 「ハイドロスプリング」の外観 出典:日立造船

 ハイドロスプリングには九電みらいエナジー担当した出力12kWの太陽光発電設備と、出力1kWのレンズ風車を利用する風力発電設備が接続されている。これらによって発電された電力を利用して水素をつくる水素製造装置は、日立造船が開発を担当した。ここで製造された水素は太陽電酸が手掛けた低圧バッファタンクを通して圧縮機に運ばれ、その後、高圧畜圧ユニットに貯蔵されるという仕組みだ(図3)。

図3 「ハイドロスプリング」の構成 出典:日立造船
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