青森・八甲田山に地熱発電、地下2000メートルで掘削調査を開始自然エネルギー

東北を中心に地熱発電の開発プロジェクトが活発になってきた。豪雪地帯で有名な青森県の八甲田山の北西地域ではJR東日本など3社が6月から掘削調査を開始する。地下2000メートルまで坑井を掘って地質構造を把握した後に、蒸気の噴出量を確認してから発電所の建設計画に着手する見通しだ。

» 2015年05月27日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 JR東日本、大林組、川崎重工業の3社は青森県内で地熱資源の開発プロジェクトを推進する。青森市にある八甲田山の北西地域が対象で(図1)、近くには「千人風呂」で知られる「酸ケ湯(すかゆ)温泉」がある。

図1 地熱資源の開発調査を実施する八甲田北西地域。出典:JR東日本ほか

 一帯は「十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園」に含まれていて、2012年から規制緩和によって地熱発電所の建設が条件付きで可能になった。JR東日本など3社は2013年度に国から「地熱資源開発調査事業費助成金」の交付を受けて調査を実施してきた(図2)。同じ八甲田山の周辺ではオリックスも地熱発電所の建設に向けて調査を進めている。

図2 「地熱資源開発調査事業費助成金」の対象プロジェクト。出典:JOGMEC

 地熱発電所を建設するにあたっては地元の理解を得たうえで、地表調査、掘削調査、探査を経て、事業化を判断する必要がある(図3)。JR東日本などは2014年度までに最初の地表調査を完了したことから、2015年度に掘削調査を実施する。八甲田山の北西地域にある国有林の中に、調査用の坑井(こうせい)を地下2000メートルの深さまで掘る予定だ。

図3 地熱発電所を建設するまでのプロセス。出典:資源エネルギー庁

 6月上旬から10月下旬までかけて坑井を掘り、地下の地質構造を調べる。掘削調査と並行して生物や生態系の調査、周辺の温泉の成分なども分析して、地熱発電の影響を評価することにしている。

 掘削調査の後に実施する探査の段階で蒸気の噴出量などを確認して、地熱発電の可能性を判断したうえで発電規模を検討する。探査が終了するのは2016年度になる見通しだ。発電規模が10MW(メガワット)を超える場合には、法律で定められた環境影響評価の手続きを完了してから建設工事に着手する。

 3社のうち大林組は全国にメガソーラーを展開して再生可能エネルギー事業を拡大中だ。川崎重工業は地熱発電にも利用できる蒸気タービンの主要メーカーで、最近は再生可能エネルギーから水素を製造するプロジェクトにも参画している。JR東日本は青森・岩手・秋田の北東北エリアを中心に、太陽光から風力・地熱・バイオマスまでを多角的に活用して、再生可能エネルギーの供給基地を展開する構想を進めている(図4)。

図4 JR東日本による北東北エリアの再生可能エネルギー導入状況(画像をクリックすると拡大)。出典:JR東日本

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