日本の再生可能エネルギーの中で開発が最も遅れている地熱発電の拡大に向けて、政府は総額65億円にのぼる2014年度の助成金の交付対象を確定した。北海道から宮崎県まで23件のプロジェクトに対して、地熱発電を開始するために必要な地表調査や掘削調査の費用を助成する。
経済産業省は2014年度に65億円の予算で実施する「地熱資源開発調査事業費助成金」の交付対象に23件のプロジェクトを採択した(図1)。この助成金は2012年度から継続して実施している制度で、2014年度の対象プロジェクトのうち13件は前年度からの継続案件、残り10件が新規案件である。
新たに対象になったプロジェクトには北海道で3件、東北で3件、九州で2件のほか、新潟県の糸魚川市と静岡県の南伊豆町が入った(図2)。南伊豆町のプロジェクトは地元の事業者が中心になって「富士箱根伊豆国立公園」の中で地熱発電を計画している。助成金を利用して地表調査や温泉変動調査を2014年度中に実施する予定だ。
このほかにも継続・新規を合わせて12件のプロジェクトが国立・国定公園の中で計画中である。政府は自然公園の中に地熱発電所を建設することを厳しく規制してきたが、景観の維持を前提に2012年から規制を緩和したことで、全国各地の自然公園で開発プロジェクトが始まった。
日本は地熱の資源量が世界で3番目に多いものの、実際に発電に利用できている比率はわずか2%にとどまる(図3)。一方で地熱資源量が世界で最大のアメリカでは、すでに10%以上の地熱資源が発電に使われている。地熱発電は再生可能エネルギーの中でも発電量が安定しているため、日本でも導入量を拡大することが急務になっている。
このため経済産業省は2015年度の助成金を90億円に拡大して地熱開発プロジェクトを促進する方針で、すでに国家予算の概算要求に盛り込んだ。助成金は地熱開発の初期段階で実施する地表調査に対して費用の4分の3まで、その後の掘削調査は費用の2分の1まで交付する。
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