日立製作所は2015年6月11日、2015年度(2016年3月期)の各事業の戦略を説明する「Hitachi IR Day 2015」を開催。2015年4月に新たに設立したエネルギーソリューション社により、自然エネルギー関連や電力システム改革による新たな電力流通向けのソリューションを提供していく方針を示した。
日立製作所では2015年4月にエネルギーソリューション社を設立。原子力や発電ソリューションなど、従来の電力会社向けのシステムや発電所関連ビジネスを展開してきた電力システム社と並び、電力システム改革により生まれる新たな電力流通ソリューションや自然エネルギー関連のビジネスを担当する。
電力関連を担当する2社の売上高の合計は2014年度(2015年3月期)で4726億円で、エネルギーソリューション社はその内30%強を占め、1500億円程度だとされている(図1)。
エネルギーソリューション社設立の狙いについて、新たに同社の社長に就任した野本正明氏は「電力システム改革により顧客と市場が多様化する中、より市場や顧客に合わせたビジネスニーズを捉え、最適なソリューションを提案していくためだ」と語る。
日本の電力システム改革は、2015年4月に電力広域的運営推進機構が発足した他(関連記事)、2016年4月には電力小売全面自由化がスタートする(関連記事)。さらに2020年4月には発送電分離が行われる計画だ(関連記事)。この流れの中、従来になかった新しいニーズや課題が生まれてくることが予想されるため、同社ではシステム/コンポーネントの提供と併せて、新たな市場に最適なソリューションを生み出し、提供していくことを目指す(図2)。
これらの新たな取り組みにおいて、日立製作所の強みとなっているのが「OT(制御技術)」と「IT(情報技術)」だ。電力システムなどを安定的に運用するためには高い制御技術が必要となる。一方で電力システム改革ではスマートメーターやスマートグリッドなど、ITの力を活用した新しい電力需給の姿が求められている。実現するには制御とITの両面で高い技術力が必要となる。日立製作所にはそれがあるというわけだ。野本氏は「特にソリューション事業についてはOTとITを組み合わせた最適なソリューションを提供し差別化を図っていく」と述べている。
この強みを背景に、国内では自然エネルギ―の導入拡大と系統安定化、電力広域的運営推進機関システム、新電力事業者向けソリューションなどで成長を狙う。一方、海外については、現在実証実験プロジェクトを進めている北米での系統安定化ビジネスの事業化を狙う方針だ。
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