分離・回収方法の本命とも言える膜分離法は、CO2を透過する性質の膜を使って回収する。次世代の石炭火力発電で主流になる「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」と組み合わせると、排出するガスの圧力を利用してCO2を透過させることができる(図4)。CO2の分離・回収に必要なエネルギーが少なくて済むためにコストが下がる。
同時に発生する水素を透過する膜の開発も進んでいて、回収した水素を使って燃料電池でも発電することが可能になる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主導する研究開発プロジェクトでは、CO2と水素の透過膜の性能を高めながら、実用化に向けて大型の膜を製造する技術の開発に取り組んでいく。
その一方で世界の最先端を行く石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証プロジェクトが広島県で始まっている。中国電力とJ-POWER(電源開発)が共同で建設中の「大崎クールジェン」である。プロジェクトは3段階に分かれていて、IGCC、CO2分離・回収、さらに燃料電池を組み合わせた「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」の実証設備を建設する計画だ(図5)。
第1段階のIGCCは2017年3月に試験運転を開始して、第2段階のCO2分離・回収設備を2019年度に稼働させる。CO2の分離・回収には物理回収法を採用して効果を実証する。第3段階のIGFCも2021年度に試験運転を開始できる見込みで、日本で初めて商用レベルのIGFCが稼働することになる。
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