日本の電力の中心になる火力発電の最大の課題はCO2排出量の削減だ。発電効率の改善に加えて、CO2を回収・利用・貯蔵する「CCUS」の取り組みが進み始めた。2030年代にはCO2の回収コストが現在の3分の1に低減する一方、CO2から水素やバイオ燃料を製造する技術の実用化が見込める。
世界をリードする日本の火力発電技術は2つの方向で進化を続けていく。1つは石炭火力とガス火力の発電効率を向上させて、燃料の使用量とCO2排出量の両方を削減する。もう1つは発電に伴って生じるCO2を回収・利用・貯留する「CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization & Storage」の取り組みだ(図1)。
CCUSは火力発電設備の中でCO2を分離して回収するプロセスから始まる。現在は「化学吸収法」と「酸素燃焼法」の2種類が主流だが、コストが高いために実用化が難しい(図2)。CCUSを広く普及させるために、最初に解決しなくてはならない問題がCO2を分離・回収するコストの低減だ。
化学吸収法は溶剤が化学反応を起こしてCO2を吸収する方法で、分離・回収の設備が必要になるためにコストが高くなってしまう。一方の酸素燃焼法はボイラーの中で高濃度の酸素を循環させてCO2を分離・回収しやすくする。化学吸収法と比べるとコストが4分の3程度で済む。
2020年代になると「物理吸収法」の実用化が見込まれている。CO2を高圧の状態にしてから、物理的に溶剤の中に吸収する方法だ。化学吸収法と比べてCO2の吸収量が多くなって、1トンあたりの回収コストは2分の1程度に下がる。さらに2030年代には「膜分離法」と呼ぶ新しい技術によってコストが大幅に低下する見通しである(図3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.