太陽光発電の運転開始率は2割強、未着手の案件が過剰なルールを誘導再生可能エネルギーの普及を阻む壁(2)(1/2 ページ)

固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備のうち、実際に運転を開始した割合は2割強にとどまっている。それでも政府は各地域の送配電ネットワークに接続できる上限を決めて、発電設備の出力を制御するルールを強化した。実効性は不透明ながら、事業者に対する規制は厳しくなる一方だ。

» 2015年07月07日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第1回:「太陽光発電は開発期間が短い、風力は5年で地熱は10年を超える」

 日本の再生可能エネルギーが抱える問題点は、固定価格買取制度の現状を見れば一目瞭然である。2015年3月末時点で買取制度の認定を受けた発電設備の総容量は8768万kW(キロワット)に達している(図1)。国内には火力や原子力を含めて2億5767万kWの発電設備があるが、その3分の1に匹敵する規模の発電設備が3年足らずで新たに認定を受けたことになる。

図1 固定価格買取制度による再生可能エネルギーの発電設備の導入量と認定量(バイオマスは燃料に占めるバイオマスの比率を反映)。出典:資源エネルギー庁

 ところが実際に運転を開始した発電設備は1875万kWに過ぎず、8割近くは稼働していない。認定設備の94%を占める太陽光発電の運転開始率が2割強にとどまっているためだ。これから運転を開始する発電設備が増えてくるものの、一方で運転開始に至らない案件が相当の数にのぼることも確実な状況である。

 いわゆる“太陽光バブル”と呼ばれる現状だが、その結果として発電事業者には過剰な制約が課せられてしまう。1つは地域ごとの接続可能量である。太陽光発電設備の認定量が急増した九州をはじめ、全国7地域で送配電ネットワークに接続できる太陽光発電設備の上限値が設けられた(図2)。

図2 地域別の太陽光発電設備の接続状況(2015年2月末〜4月末)と接続可能量。出典:資源エネルギー庁

 九州を例にとると、太陽光発電の接続可能量を817万kWに設定している。この上限は2カ所の原子力発電所にある6基の発電設備を全面的に稼働させる前提で算出した数値である。すでに6基のうち1基は運転終了が決まったために実態とかけ離れているが、九州電力は接続可能量を修正していない。

 それでも九州では2015年4月末の時点で送配電ネットワークに接続済みの太陽光発電設備は489万kWで、まだ余裕がある。ただし接続契約の申込を完了した発電設備を含めると1326万kWに増えて、さらに認定済みを加えると1831万kWに拡大する。接続可能量を2倍以上も上回っている。

 こうした状況になったため政府は2015年1月に、太陽光発電設備の出力を電力会社が制御できるルールを強化した。特に認定量が接続可能量を大幅に超えている北海道・東北・九州の3地域では、新規の発電設備に対して無制限で出力を制御できるようになった(図3)。発電事業者は出力制御によって売電収入が減ることになるため、3地域では新たな太陽光発電設備の開発計画は急速に縮小している。

図3 太陽光発電設備に対する出力制御ルール(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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