移動式の水素ステーションが広がる、東京に続いて愛知と福岡に電気自動車

燃料電池車の普及に向けて最大の課題は水素ステーションの整備だ。設置コストの安い移動式の水素ステーションが解決策の1つとして注目を集めている。東京都内で3月に日本初の商用サービスが始まったのに続き、愛知県と福岡県でも9月から年末にかけて相次いで商用サービスを開始する。

» 2015年09月04日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 燃料電池車の普及を推進する愛知県と福岡県では、いずれも県庁の敷地内に移動式の水素ステーションを開設する計画だ。愛知県庁の移動式水素ステーションは岩谷産業が製造して、合同会社の「日本移動式水素ステーションサービス」(略称:ニモヒス)が運営する体制をとる(図1)。水素は1キログラム1200円(税込み)で販売する。

図1 愛知県庁に導入する移動式の水素ステーション。出典:愛知県産業労働部、日本移動式水素ステーションサービス

 ニモヒスは豊田通商・岩谷産業・太陽日酸の3社が2015年2月に共同で設立した。3月から日本初の移動式水素ステーションの商用サービスを東京都心(千代田区)で実施している。愛知県庁の移動式水素ステーションは名古屋市にある庁舎の駐車場内に設置して9月10日からサービスを開始する予定だ(図2)。

図2 移動式水素ステーションの設置場所。出典:愛知県産業労働部

 移動式水素ステーションは大型のトラックに水素の供給設備を搭載したものである。内部にある液化水素の貯蔵タンクから水素ガスを生成したうえで、圧縮した水素ガスをディスペンサーから燃料電池車に供給することができる(図3)。設置場所を移動できることに加えて、導入コストが通常の水素ステーション(約5億円)と比べて2分の1以下で済むメリットがある。

図3 移動式水素ステーションの内部構造(上)、燃料電池車に水素を充填(下)。出典:岩谷産業、日本移動式水素ステーションサービス

 愛知県では9月11日に同じ名古屋市内で2カ所目の移動式水素ステーションがサービスを開始する。設備や運営体制、販売価格も県庁と同じだ。いずれも水素の充填(じゅうてん)時間は5キログラムの場合で3分程度で済む。燃料電池車は水素1キログラムで100キロメートル以上を走ることができる。

 福岡県庁の移動式水素ステーションは庁内の敷地に設置場所を造成する(図4)。9月上旬から11月下旬まで造成工事を実施して、年内にサービスを開始できる見込みだ。東京・名古屋に続いて福岡にも移動式水素ステーションの商用サービスが拡大する。

図4 福岡県庁の移動式水素ステーションの設置場所。出典:福岡県商工部

 政府は水素エネルギーを日本の未来の産業に育成する方針で、2014年6月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定して普及促進に乗り出した。その中で大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏・北部九州圏)を中心に、2015年末までに100カ所の水素ステーションを整備する目標を掲げている。現状では目標達成が難しい状況だが、設置コストの安い移動式が拡大策の1つになる。

 移動式の水素ステーションは1時間あたり2台程度の充填が可能で、液体水素を補充しない状態でも通常の燃料電池車であれば5〜6台に供給することができる。ただし一般の水素ステーションが1時間に6台程度を充填できるのと比べて供給能力は低い。大都市圏に水素の供給拠点を増やす方法としては有効である。

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