ドイツの大手自動車メーカー2社がプラグインハイブリッド方式の電気自動車を相次いで発売した。フォルクスワーゲンは3種類のドライブモードを装備した「Golf GTE」を400万円台で日本市場に投入、BMWは900万円台の高価格帯で対抗する。いずれも普通充電方式だけを採用した。
航続距離が問題になる電気自動車の中で、プラグインハイブリッド方式は微妙な位置にある。100%電気自動車よりも航続距離は長くなるものの、頻繁に充電しなければハイブリッド車と比べた環境性能の良さは発揮できない。充電設備が普及し始めたヨーロッパで人気が高まってきて、日本国内でもドイツの大手2社が新車を投入して市場拡大を図る。
フォルクスワーゲンはベストセラーの「Golf」をベースにした「Golf GTE」を9月8日から日本全国で発売した(図1)。標準モデルの希望小売価格は499万円(税込み)で、国のクリーンエネルギー自動車を対象にした補助金を最大38万円まで適用できる。同じタイプのエンジン車(Golf GTI、391万円)と比べて、補助金を適用した場合で70万円高くなる。
最大の特徴は3種類のドライブモードを選べる点にある。電気モーターだけで駆動する「Eモード」では、ガソリンを使わずに最長53キロメートルを走行することができる(図2)。モーターとエンジンの両方が同時に作動する「GTEモード」に切り替えると、0〜100km/h(キロメートル/時)の加速時間が7.6 秒と高速になる。中間の「HVモード」はモーターとエンジンのバランスを取りながら燃費を重視して走る。
電気モーターを駆動するリチウムイオン電池の容量は8.7kWh(キロワット時)で、家庭用の200V(ボルト)の電源コンセントにケーブルを接続して充電することができる(図3)。日産自動車の100%電気自動車「リーフ」のバッテリー(24kWh)と比べると容量は3分の1程度だ。普通充電方式だけに対応して、充電には約3時間かかる。
同じ9月8日にはBMWもプラグインハイブリッド方式の「BMW X5 xDrive40e」を発売した(図4)。車高を高くしたSAV(スポーツ・アクティブ・ビークル)と呼ぶタイプで、標準モデルの希望小売価格は927万円(税込み)である。発売時点で補助金の適用額は決まっていない。販売中のプラグインハイブリッド車(BMW i3、546万円)が75万円まで補助金を適用できることから、最大で75万円以上になる見通しだ。
バッテリーの容量は9.2kWhでGolf GTEよりも少し大きい。同様に普通充電方式だけに対応して、3.5〜4時間で充電が完了する。燃費を抑える「ECO PROモード」に切り替えると、エンジンや空調を自動的に制御して燃料の消費量を最大20%低減することができる。
国産メーカーではトヨタ自動車の「プリウスPHV」をはじめ、ホンダと三菱自動車がプラグインハイブリッド車を販売している。ドイツからはフォルクスワーゲンとBMWに加えて、メルセデスベンツとポルシェもプラグインハイブリッド車を日本市場に投入済みだ。
ドイツでは2020年までに100万台以上の電気自動車を普及させる計画だが、2014年末の時点では3万台に満たない状況にある。日本政府は2020年の販売台数のうち15〜20%を電気自動車とプラグインハイブリッド車に転換する目標を掲げている。2014年の年間販売台数は3万台を超えて、ドイツを上回る状況にある。ドイツの自動車メーカーにとっても日本市場に対する期待感は本国より大きいのかもしれない。
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