「アンモニア火力発電」がいよいよ実現か、41.8kWガスタービン発電に成功蓄電・発電機器(1/2 ページ)

産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 水素キャリアチームは、東北大学 流体科学研究所との共同研究により、アンモニアを燃料とした41.8kWのガスタービン発電に成功した。

» 2015年09月24日 07時00分 公開
[三島一孝ITmedia]

 今回の研究は、総合科学技術・イノベーション会議の「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム) エネルギーキャリア」の委託によるもの。SIPとは、科学技術イノベーションの実現に向けて、縦割り行政の弊害を抑えるために策定された府省横断型の施策で、内閣府が取りまとめを行っている。重要性の高い10の課題が取り上げられているが、その1つが水素を使った新しい「エネルギーキャリア」の開発である(関連記事)。SIP エネルギーキャリアでは、再生可能エネルギーからCO2フリーの水素を低コストに製造・利用できる技術を確立することを目的としており、「水素キャリア」として注目を集める素材の1つが「アンモニア(NH3)」だ。

水素社会の鍵を握る水素キャリア

 日本では「水素社会」の実現に向けた取り組みが政府主導で行われており、2020年の東京五輪・パラリンピックをその見本市とする計画などが進められている(関連記事)。これらのエネルギーインフラを水素に置き換えることを検討する中で、水素をどのような形で貯蔵し輸送するのかという点は重要なポイントとなる。水素キャリアは、水素を多く含んだ化学物質の形でエネルギーをより簡便に貯蔵・輸送を行うための媒質であり、現在では、有機溶媒に水素を着脱して用いる「有機ハイドライド(メチルシクロヘキサンなど)」と、窒素と水素から合成し、直接燃焼して用いる「アンモニア」が有力視されている。

 アンモニアは炭素を含まず、水素の割合が多い水素キャリアとして特に注目されており、発電用燃料としての利用が期待されている。さらに、アンモニアは燃焼しても主に水と窒素しか発生しないことから、従来の燃料の一部をアンモニアに置き換えるだけでも、CO2排出量の削減効果が大きい。そのため、SIP エネルギーキャリアではアンモニアを水素の貯蓄・運搬源として活用するだけでなく、アンモニアを直接火力発電の燃料として活用することも研究テーマの1つと据えている。

アンモニアをメインの燃料としたガスタービン発電

 産業技術総合研究所(以下、産総研)では、再生可能エネルギーの大量導入を支える水素キャリアの研究開発を推進しているが、東北大の流体科学研究所と連携して、アンモニアを直接燃焼させてガスタービンで発電する技術の開発にも取り組んでいる。

 アンモニアは一般の燃料より着火しにくく、また燃焼速度も遅いなどの課題があり、アンモニアを燃料とするガスタービン発電はこれまで行われていなかった。しかし、アンモニアの発電用燃料としてのポテンシャルを示すため、さまざまな燃料を利用できるガスタービンを用いた発電の実証試験を行った結果、灯油にアンモニアを約30%混焼させ、21kW(キロワット)の発電に成功している(関連記事)。

 その後、アンモニアをメインの燃料としたガスタービン運転を目指した技術開発を進め、大流量のアンモニア供給設備とメタン供給設備を整備して、アンモニアをメインの燃料としたガスタービン発電の実証試験を行った。実証試験は産総研の福島再生可能エネルギー研究所(福島県郡山市)において実施したという。

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