次に再生可能エネルギーにおける日本の位置を示そう。規模ごとに3種類の太陽光発電と、設置場所ごとに2種類の風力発電だ。
金利抜き建設コストは1867米ドル(ポルトガル、10kW)から3366米ドル(フランス、3kW)の範囲にある。日本は3101米ドル(4kW)であり、建設時に必要な費用が大きいことが分かる。
均等化発電原価(割引率3%)は、96米ドル(ポルトガル)から日本の218米ドル。7%の場合、132米ドル(ポルトガル)から293米ドル(フランス)、日本は302米ドル。10%の場合162米ドル(ポルトガル)から374米ドル(日本)。
金利抜き建設コストは1029米ドル(オーストリア、200kW)から1977米ドル(デンマーク、100kW)の範囲にある。報告書には日本の数値がない。
均等化発電原価(割引率3%)は69米ドル(オーストリア)から142米ドル(ベルギー)の範囲。7%の場合、98米ドル(オーストリア)から190米ドル(ベルギー)、10%の場合、121米ドル(ポルトガル)から230米ドル(ベルギー)。
金利抜き建設コストはドイツの1200米ドル(5MW)から日本の2563米ドル(2MW)の範囲にある。
均等化発電原価(割引率3%)は、54米ドル(米国)から181米ドル(日本)。7%の場合は、80米ドル(米国)から239米ドル(日本)、10%の場合は103米ドル(米国)から290米ドル(日本)の範囲にある。
少なくとも住宅に設置するものと、メガソーラーに関して、日本の太陽光は高コストだ。建設コスト、均等化発電コストともOECDにおいて最弱の位置にあることが分かった。太陽電池などの部材は世界的に自由化されているため、それ以外のコストに問題があることが分かる。海外の優れた設置技術や管理・運営技術を導入する必要があるのかもしれない。
金利抜き建設コストは、1571米ドル(米国、50〜100MW)から2999米ドル(日本、20MW)の範囲にある。
均等化発電原価(割引率3%)は、33米ドル(米国)から135米ドル(日本)。7%の場合、43米ドル(米国)から182米ドル(日本)、10%の場合は52米ドル(米国)から223米ドル(日本)となった。
金利抜き建設コストは、3703米ドル(英国)から5933米ドル(ドイツ)の範囲にある。報告書では日本の値は示されていない。
均等化発電原価(割引率3%)は、98米ドル(デンマーク)から214米ドル(韓国)の範囲にある。7%では136米ドル(デンマーク)から275米ドル(韓国)、同10%では167米ドル(米国)から327米ドル(韓国)の範囲にある。
残念ながら、日本の陸上風力は高コストだ。洋上風力は一般に陸上風力よりもさらに高コストになる。報告書のデータからもそれを読み取ることができる。造船のコスト構成から類推すると、大規模で同規格の洋上風力発電装置を大量生産するなど、これまでにないとり組みが進まない限り、この傾向は変わらないだろう。
均等化発電原価は以下のような式で求めることができる。報告書では風力と太陽光の発電期間を25年、天然ガス(CCGT)を30年、石炭火力と地熱を40年、原子力を60年、水力を80年として計算している。
日本の石炭火力を例に挙げると、報告書では超々臨界圧(USC)方式を採用した場合のコストを示した。出力704MW、電力変換効率41%の発電所だ。
このとき、以下のような各種コストの合計が94.81米ドルというLCOEの値になる(いずれも1MWh当たりの金額)。
改修・廃棄コストは割引率が高くなるほど下がるものの、投資コストが急速に上がるため、割引率が10%の場合、39.77米ドルまで高まる。これは3%の場合の2.6倍ものコストだ。
原子力(改良型軽水炉、出力1152MW)は石炭火力と比較して、投資コスト(20.62米ドル、割引率3%)や管理運用コスト(27.43米ドル)、改修・廃棄コスト(0.42米ドル)が高いものの、燃料コスト(14.15米ドル)が安く、炭素コストがゼロである。これが割引率3%の場合の原子力の低コスト(LCOE:62.63米ドル)を導く。
*6) 温暖化による損失の貨幣換算値。
日本で2020年に発電所を新設したとすると、先進国を中心とした22カ国のうち、最も高くつくことが報告書から分かった。金利抜き建設コストの数値が特に悪い。
報告書が結論付けた日本の未来を変えることはできないのだろうか。
変換効率や燃焼技術の改善はもちろん、発電コストに影響するあらゆる原因に対してとり組むことができなければ、結論は変わらないだろう。
発電以外の技術、例えばデマンドレスポンスなどを大規模導入することによって、実質的な発電コストを下げていく努力も必要だろう。
【訂正】 記事の掲載当初、5ページ目で「LCOEの値は、割引率が10%の場合、39.77米ドルまで高まる」としておりましたが、これは「割引率が10%の場合、39.77米ドルまで高まる」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。訂正と合わせて、5ページ目に原子力の各種コスト値を追記しました。(2015年10月5日)
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