最悪の発電コスト、日本に未来はあるのか電力供給サービス(2/5 ページ)

» 2015年09月30日 13時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

安定して安い石炭

 報告書は220ページに及ぶため、全ての内容を紹介することはできない。まずは技術ごとの発電コストの分布を示す。その後、日本の発電コストが他国と比較してどのような位置にあるのかを紹介する。

 図3はいわゆるベースロード電源の発電コストだ。発電所の建設から運営、廃止までの全コストを生涯発電量で割った均等化発電原価(LCOE)を縦軸とした。3種類の技術、CCGT(天然ガス、オレンジ色)、石炭(灰色)、原子力(青色)の値が並ぶ。

 左端の3本の棒グラフを見ると、原子力の発電コストが明らかに低い。22カ国全てで、原子力が最も安価な電源であるというのが報告書の結論だ。LCOEの値は中国の25.59米ドル/MWhから、英国の64.38米ドル/MWhの範囲に散らばる。日本は62.63米ドル/MWhであり、上限に近い。

図3 ガス火力、石炭火力、原子力の発電コスト(LCOE) 出典:IEA

 だが、中央、右と進むに従って原子力の発電コストが高くなっていく。これは割引率(図1にあるdiscount rate)を変えて試算したためだ。割引率は将来価値を現在価値に換算するための一般的な方法。左端は割引率が3%と低いときの発電コスト。中央は7%、右端は10%だ。報告書では原子力が資本集約的であるため、割引率に敏感であるとしている*4)

 黄色い四角で表した中央値(全データの中央にある値、メジアン)を見ても、天然ガスや石炭は割引率の影響を比較的受けにくいことが分かる。報告書では、天然ガスや石炭は燃料コストに依存する比率が高いため、原子力とは異なる不確実性があると指摘している。

*4) 電力会社が低金利で資金を調達できるなら、低い割引率(例えば3%)を当てはめることが妥当。逆にいえば投資リスクが高い国では高い割引率が適用されるため、原子力発電が他の発電方式と比較して不利になる(割引率10%などが当てはまる)。日本はこれまで投資リスクが低いため、3%が妥当だとされていた。

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