小売電気事業者がスイッチング支援システムから需要家の情報を取得して、供給契約を変更するまでの流れを見てみよう。需要家から契約変更の意向を受けた時点で、最初に設備の情報を入手する(図3)。その中に含まれる契約電力の情報をもとに料金プランを提案することもできるが、さらに直近の電力使用量のデータも入手して複数のプランを提案するアプローチが一般的になるだろう。
需要家の設備情報や使用量のデータは送配電事業者のシステムに入っているが、スイッチング支援システムを通じてほぼリアルタイムに入手できるようになる。ただし使用量のデータだけは需要家の同意を確認したうえで、パスワード(PW)を発行してから参照できる仕組みだ。一連の処理は2営業日以内に済むため、需要家の意向を受けてから素早く料金プランを提示して契約にこぎつけることができる。
需要家から契約変更の申込書を受けた後は、再びスイッチング支援システムを使って託送契約の変更手続きを進めていく。託送契約の変更には他の小売電気事業者のシステムにも連携が必要になるうえに、送配電事業者の処理が複雑になるため、手続きを完了するまでには少し時間がかかる。それでも申請の内容に問題がなければ、早い場合には2〜3営業日で済む流れになっている。
小売電気事業者がスイッチング支援システムを利用する方式は2通りある。1つはインターネットを使って画面上で情報を入力していく。事業者は事前に認証機関から「クライアント証明書」の発行を受けてパソコンにインストールしておく必要がある。そのうえでIDとパスワードを使ってログインする。そうすると画面が表示されて、情報の入力や閲覧・取得が可能になる(図4)。
もう1つの方式はコンピュータ間で情報を直接やりとりできる「API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」を利用する。小売電気事業者のシステムにスイッチング支援システムと連携するためのAPIを組み込むことで、手続きの自動化を図ることができる。
スイッチング支援システムを提供する電力広域的運営推進機関では11月から連携テストを開始する予定だ(図5)。APIを使ったシステム間の連携テストは年が明けて1月から実施する。テストを経て3月にはシステムの本番運用を開始して、4月からの全面自由化に備える。
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