シャープが開発した「採光フィルム」は、窓に設置することで太陽光などの外光を効率良く取り込める。同社が実施した実証実験では、この採光フィルムを導入することで年間4割以上の照明電力の削減効果を確認できたという。
シャープが開発したオフィスビルなどの照明用電力の削減に貢献する「採光フィルム」。同社は同フィルムの節電・省エネ効果を実証するため、研究所の実験室に採光フィルムを設置し、1年間(2015年9月1日〜2015年8月31日)にわたり室内の照度測定を行った。その結果、室内照明の消費電力量が年間で約4割の削減につながったという。
採光フィルムはシャープが液晶ディスプレイの開発で培った光学制御技術を応用。太陽の年周/日周運動を考慮した光学設計に基づく独自の技術を採用している。表面に微細加工を施すことでフィルムの片側よりさまざまな角度から入射する光を、反対側から一定の角度で出すことを可能にしている。
このフィルムをガラスに張り付けるなどし、窓の上部に設置することで、季節や時間帯に応じて変化する入射角度にかかわらず、太陽光を効率的に天井方向に取り込み、不快なグレア(まぶしさ)を抑えながら室内全体を明るくすることができるのが特徴だ。
同社はこの採光フィルムの導入による節電・省エネ効果の検証に向けた実証を、千葉県柏市の柏研究所実験室(床面積64.8平方メートル、窓方向:南南西)で1年間にわたり実施した。、実験室の窓上部に取り付けた採光フィルムの位置から1メートル間隔で計8台の照度計を設置し、午前8時から午後5時までの時間帯で15分ごとに照度の測定を行った(図1)。
その結果、オフィスで求められる照度500lx(ルクス)を維持するのに必要なLED照明の消費電力量をどの程度削減できるかを算出したところ、採光フィルムの導入により室内照明の消費電力量が年間で42.9%削減できたとしている。
室内照明の電力削減量の変化を1年間にわたって測定した実績推移をみると(図2)、太陽高度が低くなり採光フィルムへの入射光が多くなる秋から春(2014年9月から2015年3月)にかけて照明用電力削減率が大きい(赤色は削減効果が大きく、緑色は小さい)。2014年10月29日では約73%の削減効果を生んでいる。
シャープでは採光フィルムをサッシに納めた「自然採光システム」として製品化し、オフィスビルをはじめ、学校、病院、コンビニなどをターゲットに展開していく方針だ。
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