NEDOは太陽光による発電コストを2030年までに7円/kWh(キロワット時)に下げるという目標に向け、複数のプロジェクトを推進している。このロードマップの実現に貢献するとして、シャープが実用化を進める高効率バックコンタクト型太陽電池の量産に向けた技術開発が新たにNEDOプロジェクトとして採択された。
シャープはこのほど新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する太陽光発電の低コスト化に向けたプロジェクトの1つに、同社の「高効率バックコンタクト型太陽電池の量産技術開発」が採択されたと発表した。
量産を目指すのはシャープが2014年に同じくNEDOプロジェクトである「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発」において、豊田工業大学などと共同開発したヘテロ接合バックコンタクト構造を採用する結晶シリコン太陽電池だ(図1)。
バックコンタクト構造とは、電極を太陽電池の裏側に集めて受光面のシャドーロスを無くす構造のこと。電極を太陽電池の表面に配置した場合、電極の影となる部分は発電が行えない。こうした影による発電効率の損失をシャドーロスと呼ぶ。
ヘテロ接合とは単結晶シリコン基板の表面に高品質アモルファスシリコン膜を形成(ヘテロ接合)することで、太陽光の照射で生じた正孔(+)と電子(−)が電池内部で結合して消失する現象を低減する技術だ。シャープと豊田工業大学などは2014年の研究で、このヘテロ接合とバックコンタクト構造を融合させ、従来困難だった高い電流と電圧の両立を実現。結晶シリコン太陽電池のセル変換効率25.1%を達成していた。
NEDOは2014年9月に「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」を策定。太陽光による発電コストを2020年に14円/kWh(キロワット時)、2030年に7円/kWhにするという技術開発ロードマップを発表している。
シャープは2014年の発表以降もヘテロ接合バックコンタクト構造を採用する太陽電池の実用化に向けた研究開発を続けていた。その内容が同ロードマップの実現に貢献するとして、今回NEDOが「先端複合技術型シリコン太陽電池の技術開発」プロジェクトに採択した。プロジェクトの実施期間は2015〜2019年度を予定している。
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